法令ガイド

 

第2号 年金制度改正法:社会保険の適用範囲が拡大されます(2024年10月から施行)

文献番号 2024WLJLG002
Westlaw Japan コンテンツ編集部

【この記事のポイント】

 2024年10月1日から、従業員数が100名以下の企業でも、51名以上の場合には、一部のパート・アルバイトの方(短時間労働者)の社会保険への加入が義務化されます。

Ⅰ 概要

1.年金制度改正法とは?

 年金制度改正法(正式名称、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(※))は、より多くの人がこれまでよりも長い期間、多様な形で働く社会へと変化していくことが見込まれる中で、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、①短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、②在職中の年金受給の在り方の見直し、③受給開始時期の選択肢の拡大、④確定拠出年金の加入可能要件の見直し等の措置を講ずる必要があるとして、関係法令を改正するものです。
 この記事では、年金制度改正法の中でも、①の短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大に関する改正のうち、今後施行される、従業員51名以上の企業についての社会保険の適用範囲の拡大について、説明していきます。

2.短時間労働者に対する社会保険の適用の範囲の拡大のポイントは?

 この法律により、従業員数が51名以上の企業は、今まで社会保険の加入が必須ではなかった短時間労働者(原則週労働時間30時間未満)の一部を、社会保険に加入させなければならなくなりました。(なお、従業員数が101名以上500名以下の企業については、すでに、今回の年金制度改正法の2022年施行分により、短時間労働者を社会保険に加入させる義務が生じています。)

3.施行日は?

 年金制度改正法は、改正の内容等により、施行日が異なります。今回説明する従業員数51名以上100名以下の企業への社会保険の適用範囲の拡大については、2024年10月1日から施行されることが決定しています。

4.企業として求められること

 以上で述べてきたとおり、2024年10月から、従業員数51名以上100名以下の企業についても、一部短時間労働者の社会保険への加入が義務付けられます。まずは、ご自身の会社がこの制度の対象になるか、確認しましょう。
 対象となる場合には、対応が必要となります。一例ですが、①適用対象者の把握→②経営陣等との情報共有等の上で社内での対応方針を決定→③社内周知→④従業員とのコミュニケーション→⑤書類の作成・届出のようなステップを踏むと良いでしょう。詳細については、Ⅱのチェックリスト等をご覧ください。

Ⅱ 短時間労働者の社会保険加入義務化対応チェックリスト(2024年10月施行分、企業向け)

1.従業員数*1が51名以上ですか?

    • *1 従業員数=「現在の厚生年金の保険の適用対象者」の数
      =フルタイムの従業員数+週労働時間がフルタイムの4分の3以上の従業員数
      (※従業員には、パート・アルバイトの方等を含みます。)

2.加入対象者の把握

下記の①~④の全てに該当するパートやアルバイトの方*2はいますか?

    • *2 以下の①~④の全てに該当したパート・アルバイトの方の社会保険の加入が義務となります。
      • *3 フルタイムの週所定労働時間が40時間の企業の場合。
        契約上の所定労働時間であり、原則、臨時に生じた残業時間は含みません。

      • *4 所定内賃金=基本給+諸手当
        ただし、残業代・賞与・臨時的な賃金等は含みません。

      • *5 休学中の学生や夜間学生は加入対象です。

3.方針決定

 新たな加入対象者がいる場合、会社が負担する社会保険料にも変化が見込まれます。
「社会保険料かんたんシミュレーター」(厚生労働省ホームページ)では、社会保険料の事業主負担分(年)の概算を知ることができます。 また、適用範囲の拡大にあたり、経営・労務相談を無料で受けられる場合もあります。 これらのサービスを利用するなどして、十分な情報を得た上で、経営陣等に説明の上、社内の対応方針を決定しましょう。
 なお、経営陣等に対する説明には、「社会保険適用拡大 経営陣や幹部への説明のポイント」(厚生労働省ホームページ)も参考になります。

4.社内周知

(1)現場責任者への周知

 現場責任者への説明には、「社会保険適用拡大 現場責任者への説明のポイント」(厚生労働省ホームページ)が参考になります。

(2)加入対象者への周知・コミュニケーション

 従業員への説明には、「社会保険適用拡大 従業員への説明のポイント」(厚生労働省ホームページ)が参考になります。

5.書類の作成・届出(2024年10月7日まで)

 2024年9月上旬までに、日本年金機構から新たに適用拡大の対象となることを知らせる通知書類が届きます。
 「被保険者資格取得届」を準備の上、2024年10月7日までに、厚生年金保険の「被保険者資格取得届」を書面又はオンラインで届け出ましょう。
 なお、この届出後も、加入対象となる者を新規に採用するなどした場合には、随時、届出が必要となると思われます。

6.最新情報に着目

 現在、短時間労働者の社会保険の適用対象者につき、企業の従業員数(2024年10月から51名以上)で区切るいわゆる「企業規模要件」自体の撤廃も検討されています(「◎年金財政の検証開始=今夏にも結果、制度見直しへ-厚労省」(※))。 このように、企業が対応しなければならない法改正等は、数多くなされており、対応するためには、まず、最新情報に触れることが重要です。最新ニュースや法令の情報等を把握し、折よく対応していくためには、Westlaw Japanがおすすめです。

*このチェックリストは、文中のリンクの他、末尾のリンクを参考に、一部、編集・加工等して作成しています。簡易化のため、適宜省略・加筆等していますので、詳細は下記リンク等をご参照ください。

(掲載日:2024年6月28日)
*この記事は作成・更新時点での情報を基に作成されています。

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