クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所 *1
東京オフィス代表 ライアン・ゴールドスティン
このたびの東日本大震災において被害を受けられました皆様へ、心よりお見舞い申し上げます。多くの日本企業の皆さまは、こうした状況下でも前進していらっしゃることと思います。今回は、アメリカ市場において、ビジネスを展開していらっしゃる日本企業の皆さまのお役に立つご報告をさせていただきます。
いかなる場合においても、経験を積んだ弁護士と早期に相談することが重要です。そして、会社が結んでいるすべての契約と保険の条項を確認する必要があります。
■ まずは、契約書の確認を。
今回の震災が原因で外国企業との契約が履行できなくなり、契約不履行の状況に陥る日本企業もあると思われます。そのような企業が契約不履行の責任を問われるかどうかは、契約の内容にかかっています。
企業間の契約では、今回の震災や9.11事件のような天災や特異な状況の下で当事者の契約上の義務の不履行を免責する条項が設けられることが多くあります。このような免責条項は、「不可抗力」条項と呼ばれています。
不可抗力条項により当事者が免責されるためには、通常、取引先に対し、不可抗力によって契約が履行できなくなったことを立証することが必要です。ライフラインや物流の停止の状況などを伝えた新聞記事、ウェブサイトのURLなどを保管したり、自社の工場などが震災により被害を受けた状況を写真に撮影するなどして、不可抗力の証拠を保存し、必要な場合にはそれらの証拠を取引先に提出できるように準備してください。
これに対し、不可抗力条項がない場合や不可抗力条項があってもその適用がなく、契約上免責されない義務の履行を怠れば契約違反となりますので、契約内容の判断については必ず自身の弁護士と相談してください。
先に述べたように、早期に、できれば契約書を検討する最初の段階から、経験豊富な弁護士に相談することが重要です。訴訟が起こされても経験を積んだ弁護士は、不可効力条項を武器にして、訴えの棄却を求めるか、または非常に好意的に決着をつけるように相手方に納得させることができるかもしれません。
■ 保険契約の確認も。
会社が契約しているすべての保険の条項をご確認ください。保険内容によっては、相手に与えた損害を補てんできる可能性があります。商用保険の中には、特定の条件に当てはまれば、第三者に与えた損害を補てんするものもあります。
■ 災害による対応の遅延について。
進行中の訴訟において、当事者として決定しなければならない事案について、今回の震災を理由とした遅延が生じることはある程度、判事の同情を得られるでしょう。だからといって、判事に現状を報告しないのでは、現状を悪化させる事態に陥ります。判事には想定できることをあらかじめ、報告することが大切です。決定などを延期できるかどうかは担当弁護士とともに見極め、一日でも早く対応すべきだと考えます。
被災地の一日も早い復興をお祈りしております。