クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所 ※1
代表 ライアン・ゴールドスティン(米国弁護士)
パテント・トロールによる世界全体の訴訟件数は2000年の3%から2008年には14%にまで拡大しており、「パテント・トロール」という呼び名は、日本企業にも浸透したが、この一年、パテント・トロールの手口も急激に変化している。
急増しているのは、製品に印刷されている特許番号(パテント・マーキング)から「特許切れ」を確認し、個人で訴えるというケースだ。
米国特許法では、特許番号の「虚偽表示」について、個人による訴訟が認められており、その罰金は米国政府と折半できる。これまでは、罰金についての解釈にばらつきがあったが、2009年に連邦巡回裁判所が、Pequignot 事件において、存続期間が満了した特許の特許番号を製品に表示することは、虚偽表示を禁止する法に抵触するとの判断を示したことに端を発し、Forest Group 事件で、実際に使用されていない特許や存続期間画満了した特許の特許番号を製品に記載する「虚偽表示」について、一つの製品に対し最高500ドルの罰金を科す判決が出されたのを受けて台頭してきた。
これらは、「マーキング・トロール」などと呼ばれている。
ある統計によると、2010年の一年間で500件あまりの虚偽特許に関する訴訟が起こされた。ちなみに、最初にマーキング・トロールが出現したのは2007年。2008年に入り、同種の訴訟はその多くが特許弁護士によって起こされている。
多くの企業から、上記の2件により急増した虚偽表示訴訟を食い止める判決が待ち望まれる中、連邦巡回区控訴裁判所は2010年8月、Stauffer v. Brooks Brothers, Inc.事件において、虚偽表示訴訟を活気づける判決を下した。
連邦地方裁判所は、請求原因を欠くものとしてStaufferの請求を棄却していたが、その理由は、Brooks Brothersがある蝶ネクタイに虚偽表示をしたことによってStauffer又は合衆国が損害を被ったことをStaufferが主張していないというものであった。
これに対し、連邦巡回区控訴裁判所は控訴審で、特許法は虚偽表示について「誰でも罰を求めて訴えることができる」と定めていることに言及し、連邦地方裁判所の決定を覆した。
Stauffer事件では、請求が公衆を欺く意図を適切に主張しているかどうかを判断するために差し戻しをしている。今後、被告の主な防御戦略は、虚偽表示は公衆を欺く目的でなされたものではないと論じることとなるだろう。被告は、弁護士の助言を信頼したことや、虚偽表示を製品から取り除くための費用や、虚偽表示を避けるための合理的な会社の方針を整備していることを証明することにより、公衆を欺く目的がないことを示せる可能性はある。今後数ヶ月で法律がさらに明確になることに期待したい。