判例コラム

 

第54回 学会ウィークの提案

早稲田大学大学院法務研究科教授
弁護士 道垣内 正人

法学系の学会の数はいまや相当数に及ぶ。各法分野の対象としている問題が多様化・高度化し、その研究はどんどん専門分化しているからである。筆者の専門領域である国際私法は伝統的に国際公法との繋がりが深く、多くの国際私法研究者は、日本で最も長い伝統を誇る国際法学会に属している(1897年に設立されたこの学会の設立目的は欧米との不平等条約改正のために学問的基盤があることを示すことにあり、国際公法・国際私法・国際政治の研究者が集められたとされる)。また、1949年に国際私法に特化した学会として設立された国際私法学会と、世界的な学会である国際法協会の日本支部(日本国際法協会)の会員にもなっていることが多い。そして、国際私法の研究領域は国境を越えて発生する法律問題全般に広がっているため、日本私法学会、日本民事訴訟法学会、海法学会、空法学会、金融法学会、著作権法学会、日本国際経済法学会などのほか、英米・独・仏・EU法や比較法の学会の会員となっている例も少なくない。

国際私法の例はやや極端かも知れないが、他の法分野でも細分化された領域に特化した学会が併存し、また、隣接する分野の学会のテーマには関心を持たざるを得ないため、複数の学会の会員となっている研究者は少なくないものと思われる。

問題はそれら複数の学会にどのように参加するかである。通常、各学会は年に1回又は2回の研究大会を開催している。その時期は、例外もあるものの、基本的には5月と10月の土・日・祝日に集中している。そのため、学会シーズンには毎週末、研究大会出席のために西に東に旅行して疲労が蓄積することになり、また、出席したい研究大会が同じ日に東京と京都で開催されていずれかを選ばざるを得ないということも生じる。さらには私事ながら、子供が幼稚園児であった頃、運動会は体育の日と決まっており、研究大会と毎年重なって一度もわが子の勇姿を見ることはできなかった。

何とかならないものだろうか(少なくとも最も季候のいい時期に研究大会を開催する必要はないはずである)。すべての学会が話し合い、同じ都市で土曜日から次の週の日曜日までの9日間にうまく配分して集中的に研究大会を開催することはできないだろうか。ただ、法学部・法科大学院の授業日程はぎりぎりの設定であり、とても5月・10月に1週間の休みを設定することは無理であろう。そうすると、いずれかの休みの時期ということになるが、たとえば9月の第1週はどうであろうか。9日間、会員になっていない学会の研究大会の傍聴を含め、様々な研究報告に触れることは、井の中の蛙にならないためにも有効であろう。また、複数の法分野の専門家がそれぞれの視点から刺激し合う共同シンポジウムの企画が今以上に生まれ、それほどの困難なく実現できるかも知れない。多くの克服しなければならない問題は予想されるが、「学会ウィーク」は一考の余地はあるのではないだろうか。

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(掲載日 2009年4月6日)

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