判例コラム

 

第23回 移住離婚から移住同性婚へ

おおとり綜合法律事務所弁護士
専修大学法科大学院教授
矢澤 昇治

同性婚がキャリフォルニア州(以下、「加州」という)でも夢でなくなった。2008年5月15日加州最高裁判所は、Lockyer v.City and County of San Francisco事件において、4対3の僅差ながら、同性のカップル間に異性のカップル間と同等な婚姻を支持する判決を下した。USAでは、マサチューセッツ州に続いて同性婚を認めた2番目の州となった。

RONALD GEORGE裁判長らの多数意見によれば、われわれが検討しなければならない問題とは、同性のカップルの公的な関係を婚姻と認めないことが加州憲法に違反するかどうかであると述べ、前提として、イングランドで認められたような「隔離するが平等の制度」の観念を明確に拒否した。そして、2000年3月7月に制定された加州家族法典(California Defense of Marriage Act)第308.5条の「加州では、男女間の婚姻だけが有効であり、承認される。」との規定および第300条について、「すべての者が、その性的な指向にかかわらず、その権限を付与される平等な尊厳と尊重に関するわが州における理解の進化に照らして、これらの条項を、ある意味で、実務上、男性の同性愛者(gay)を憲法上の基本的な市民権の保護の射程から排除するよう解釈することは適切ではない。」と判示し、これらの規定が違憲であるとした(旧法第4100条でも婚姻の必要条件を「男女間の民事上の契約」としていたことについては、矢澤『カリフォルニア州家族法』(国際書院、1989年)82頁)。本判決によれば、異性婚と同性婚を同等に婚姻として取り扱うことが、まさしく市民権の基本的な原則であるとしたのである。しかし、本判決に反対する人々は、本年11月に州憲法を改正して、本判決を覆すことを目指しているが、シュワルツネッガー州知事は、このような投票を支持しないと公言している。

かくて、カナダ国オンタリオ州控訴院が2003年6月11日判決により同性婚を認めたことから、オンタリオには同性婚を求めて外国人が移住してきたのである。ベルギーやオランダのように、同性婚をする配偶者の一方に出自要件(native status requirements)などの具備を求めていないからである。そして、加州における同性婚の挙行にも要件上何らの制限もないので、全米から加州に移動して、同性愛者が同性婚をなすことは必至であろう。かって、離婚が禁止されていた時代に行われたネバダの移住離婚は、今や移住同性婚となったのである。

加州に続き、ノールウェーも、2008年6月17日同性のパートナーシップを第二身分の地位においた1993年法を改め、オランダ、ベルギー、スペイン、カナダ、南アフリカにつづいて、同性婚を合法化し、人権の新しい指標を実現した6番目の国となった。そして、国連人権理事会も同性婚を支持するキャンペーンを行っている。

(掲載日 2008年8月18日)

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