判例コラム

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第115号 不正競争防止法2条1項1号と商標法4条1項10号の「需要者の間に広く認識されている」の意味と無効審判除斥期間経過後の無効理由に基づく登録商標無効の抗弁と商標権の権利濫用の成否 

~最高裁平成29年2月28日判決 エマックス事件~

文献番号 2017WLJCC023
北海道大学法学研究科
教授 田村 善之

Ⅰ はじめに

 本コラムが扱う最判平成 29.2.28平成27(受)1876〔WestlawJapan文献番号2017WLJPCA02289002〕[エマックス]は、不正競争防止法2条1項1号と商標法4条1項10号における「需要者の間に広く認識された」の意味について最高裁として具体例に対する判断を示した事例判決であるとともに※1、登録商標の無効理由について無効審判請求の除斥期間が経過した後で商標権侵害訴訟において登録商標の無効の抗弁を主張することは許されないが、類似商標が示す主体として需要者の間に広く認識された者に対する商標権の行使が権利の濫用に該当する旨を判示した最高裁判決である。

Ⅱ 事案の概要

 本件の当事者と関係者は以下のとおりである。

日本建装工業(X):本訴原告・反訴被告(被控訴人・被上告人)
東京エマックス(Y):本訴被告・反訴原告(控訴人・上告人)
P2:Y代表者代表取締役
米国A社(Eemax Inc.):本件湯沸器製造販売業者


 本件の本訴は、米国法人であるA社との間で同社の製造する電気瞬間湯沸器につき日本国内における独占的な販売代理店契約を締結し、「エマックス」、「EemaX」または「Eemax」の文字を横書きして成る各商標を使用して本件湯沸器を販売しているXが、本件湯沸器を独自に輸入して日本国内で販売しているYに対し、上記商標と同一の商標を使用するYの行為が不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争に該当するなどと主張して、その商標の使用の差止め及び損害賠償等を請求したというものである。
 これに対して、本件の反訴は、Yが、Xに対し、本件登録商標1(「エマックス」を横書きしてなる商標)、本件登録商標2(「エマックス」「EemaX」を横に二段書きしてなる商標)につきYが有する各商標権に基づき、それと類似する商標の使用の差止め等を請求したというものである。この反訴に対し、Xは、上記各登録商標は商標法4条1項10号に定める商標登録を受けることができない商標に該当し、その商標権の行使は許されないなどと主張して争っている。


 本件にいたる経緯を簡略化して時系列的に紹介すると、以下のとおりとなる。


1994.11.1
 Xが、A社との間で、日本国内における本件湯沸器に係る独占的販売代理店契約を締結。
2003秋頃
 P2が、Xと、本件湯沸器について代理店契約の交渉開始。
2003.11.14
 P2がYを設立、Xから本件電子瞬間湯沸器の供給を受けるなどしていたが、Yが「エマックス東京」を商号として設立したことが紛争のきっかけになる。
2004.2.28
 XからYに対し、Yの使用する電子メールアドレスがXの「エマックス」との「商標権」の侵害になる旨警告。
 ただし、Xは商標登録を受けていない※2


2005.1.25
 Yが本件商標1「エマックス」を出願(2005.9.16 登録)。
 「被告は、平成15年11月14日に設立された後、「エマックス」等表示を付した本件電子瞬間湯沸器を販売していた(・・・)ところ、原告が本件電子瞬間湯沸器の商標を登録していないことを知り、原告から登録異議の申立て等がなされるであろうこと、原告による本件電子瞬間湯沸器の販売と経済的な利害が対立する行為であることを承知の上で、平成17年1月25日、本件商標1の登録を出願し、同年9月16日にこれが登録された。」(本件第一審判決の認定)


2010.3.23
 Yが本件商標2「エマックス Eemax」(二段書き)を出願(2010.11.5登録)。「被告は、担当弁理士から、アルファベット表記についても商標登録しておいた方が良い旨のアドバイスを受け、本件商標1と同様に、原告から登録異議の申立て等がなされるであろうこと、原告による本件電子瞬間湯沸器の販売と経済的な利害が対立する行為であることを承知の上で、前訴係属中の平成22年3月23日、本件商標2の登録を出願し、同年11月5日にこれが登録された。」(同上)※3


2012.12
 Xが、Yに対し、不正競争防止法2条1項1号違反を理由とする本件本訴を提起
2013.12
 Yが、Xに対し、商標権侵害を理由とする本件反訴を提起
2014.2.6
 本件訴訟第一審の反訴答弁書において、Xが、商標法4条1項10号該当性を根拠とする無効の抗弁(権利行使制限の抗弁)を提出


 第一審の大分地判平成26.9.18平成24(ワ)881〔WestlawJapan文献番号2014WLJPCA09186008〕[エマックス]は、Xの不正競争防止法2条1項1号違反を理由とする請求に関しては、Xの商品等表示につき周知性を肯定し※4、これを認容している。他方、Yの商標権侵害を理由とする請求に関しては、商標法4条1項10号違反を理由とするXの無効の抗弁(権利行使制限の抗弁)を容認し、これを棄却している。
 控訴審の福岡高判平成27.6.17平成26(ネ)791〔WestlawJapan文献番号2015WLJPCA06176003〕[エマックス]も、Yの控訴を棄却し、原判決を維持している。主として原判決を引用している。※5
 この控訴審に先立って、Xが先に請求していた本件各登録商標に対する無効審判請求事件について、2015.3.31に特許庁で商標法4条1項10号該当を理由とする無効審決が下されていたが、控訴審判決の後、知財高判平成27.12.24平成27(行ケ)10084〔WestlawJapan文献番号2015WLJPCA12249007〕[エマックス]、知財高判平成27.12.24平成27(行ケ)10083〔WestlawJapan文献番号2015WLJPCA12249008〕[エマックス EemaX]が、商標法4条1項10号非該当を理由に、特許庁の無効審決を取り消す判断を下している※6

Ⅲ 最高裁判決

1 概略
 最判平成 29.2.28平成27(受)1876〔WestlawJapan文献番号2017WLJPCA02289002〕[エマックス]は、原判決を破棄し、事件を原審に差し戻した。その判示事項の概略は以下のとおりである。
 ① 原判決が、XのYに対する不正競争防止法2条1項1号違反を理由とする請求を認容した点について、原判決摘示の事実のみからただちに周知性があるとはいえない

 原判決が、YのXに対する商標権侵害を理由とする請求を棄却した点について、
  ② 平成17年商標登録について無効審判の5年の除斥期間経過後に不正競争の目的を示すことなく無効の抗弁を提出することは許されない
  ③ しかし、自己の業務に係る商品等を表示するものとして認識されている商標との関係で登録商標が商標法4条1項10号に該当する場合には、自己に対する商標権の行使が権利の濫用に当たることを抗弁として主張しうる
  ④ もっとも、本件各登録商標について原判決摘示の事実からただちに商標法4条1項10号に該当するとはいえない


2 判旨

 ① 不正競争防止法2条1項1号の周知性の充足を否定
  「前記事実関係等によれば、被上告人が被上告人使用商標を使用して販売している本件湯沸器は、商品の内容や取引の実情等に照らして、その販売地域が一定の地域に限定されるものとはいえず、日本国内の広範囲にわたるものであることがうかがわれる。そして、被上告人による本件湯沸器の広告宣伝等についてみると、・・・被上告人とA社との販売代理店契約の締結に関する紹介記事が複数の業界紙に掲載されたり、本件湯沸器の宣伝のため展示会への出展がされるなどしたものの、被上告人を広告主とする新聞広告が掲載されたのは平成7年及び平成11年の2回にすぎず、被上告人が平成6年度から平成24年度までに支出した広告宣伝費及び展示会費の額も、本件湯沸器の販売地域が日本国内の広範囲にわたることに照らすと、多額であるとはいえない。また、被上告人による本件湯沸器の販売についてみると、・・・大手の建設会社を含む相当数の企業等に対する販売実績があり、販売台数も一定以上にのぼることがうかがわれるものの、具体的な販売台数などの販売状況の総体は明らかでない。そうすると、・・・上告人代表者が知人を介して本件湯沸器の存在を知り被上告人との間で販売代理店契約の締結の交渉を開始したことを考慮したとしても、これらの事情から直ちに、被上告人使用商標が日本国内の広範囲にわたって取引者等の間に知られるようになったということはできない。
  したがって、被上告人による本件湯沸器の具体的な販売状況等について十分に審理することなく、原審摘示の事情のみをもって直ちに、被上告人使用商標が不正競争防止法2条1項1号にいう「需要者の間に広く認識されている」商標に当たるとして、上告人が被上告人使用商標と同一の商標を使用する行為につき同号該当性を認めた原審の判断には、法令の適用を誤った違法があるというべきである。」

 ② 無効審判請求の除斥期間経過後の無効の抗弁を否定
  「原審は本件各登録商標のいずれについても商標法4条1項10号該当性の判断をしているところ、平成17年登録商標については、商標権の設定登録の日から、被上告人が本件訴訟において同号該当性の主張をした・・・弁論準備手続期日までに、同号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求されないまま5年を経過している。
  商標法47条1項は、商標登録が同法4条1項10号の規定に違反してされたときは、不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除き、商標権の設定登録の日から5年の除斥期間を経過した後はその商標登録についての無効審判を請求することができない旨定めており、その趣旨は、同号の規定に違反する商標登録は無効とされるべきものであるが、商標登録の無効審判が請求されることなく除斥期間が経過したときは、商標登録がされたことにより生じた既存の継続的な状態を保護するために、商標登録の有効性を争い得ないものとしたことにあると解される(最高裁平成15年(行ヒ)第353号同17年7月11日第二小法廷判決・裁判集民事217号317頁参照)。そして、商標法39条において準用される特許法104条の3第1項の規定(以下「本件規定」という。)によれば、商標権侵害訴訟において、商標登録が無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、商標権者は相手方に対しその権利を行使することができないとされているところ、上記のとおり商標権の設定登録の日から5年を経過した後は商標法47条1項の規定により同法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判を請求することができないのであるから、この無効審判が請求されないまま上記の期間を経過した後に商標権侵害訴訟の相手方が商標登録の無効理由の存在を主張しても、同訴訟において商標登録が無効審判により無効にされるべきものと認める余地はない。また、上記の期間経過後であっても商標権侵害訴訟において商標法4条1項10号該当を理由として本件規定に係る抗弁を主張し得ることとすると、商標権者は、商標権侵害訴訟を提起しても、相手方からそのような抗弁を主張されることによって自らの権利を行使することができなくなり、商標登録がされたことによる既存の継続的な状態を保護するものとした同法47条1項の上記趣旨が没却されることとなる。
  そうすると、商標法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後においては、当該商標登録が不正競争の目的で受けたものである場合を除き、商標権侵害訴訟の相手方は、その登録商標が同号に該当することによる商標登録の無効理由の存在をもって、本件規定に係る抗弁を主張することが許されないと解するのが相当である。」

 ③ しかし、広く知られている相手方に対する請求は権利濫用となる
  「一方、商標法4条1項10号が、商標登録の出願時において他人の業務に係る商品又は役務(以下「商品等」という。)を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標につき商標登録を受けることができないものとしている(同条3項参照)のは、需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品等の出所の混同の防止を図るとともに、当該商標につき自己の業務に係る商品等を表示するものとして認識されている者の利益と商標登録出願人の利益との調整を図るものであると解される。そうすると、登録商標が商標法4条1項10号に該当するものであるにもかかわらず同号の規定に違反して商標登録がされた場合に、当該登録商標と同一又は類似の商標につき自己の業務に係る商品等を表示するものとして当該商標登録の出願時において需要者の間に広く認識されている者に対してまでも、商標権者が当該登録商標に係る商標権の侵害を主張して商標の使用の差止め等を求めることは、特段の事情がない限り、商標法の法目的の一つである客観的に公正な競争秩序の維持を害するものとして、権利の濫用に当たり許されないものというべきである(最高裁昭和60年(オ)第1576号平成2年7月20日第二小法廷判決・民集44巻5号876頁参照)。そこで、商標権侵害訴訟の相手方は、自己の業務に係る商品等を表示するものとして認識されている商標との関係で登録商標が商標法4条1項10号に該当することを理由として、自己に対する商標権の行使が権利の濫用に当たることを抗弁として主張することができるものと解されるところ、かかる抗弁については、商標権の設定登録の日から5年を経過したために本件規定に係る抗弁を主張し得なくなった後においても主張することができるものとしても、同法47条1項の・・・趣旨を没却するものとはいえない。
  したがって、商標法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後であっても、当該商標登録が不正競争の目的で受けたものであるか否かにかかわらず、商標権侵害訴訟の相手方は、その登録商標が自己の業務に係る商品等を表示するものとして当該商標登録の出願時において需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であるために同号に該当することを理由として、自己に対する商標権の行使が権利の濫用に当たることを抗弁として主張することが許されると解するのが相当である。そして、本件における被上告人の主張は、本件各登録商標が被上告人の業務に係る商品を表示するものとして商標登録の出願時において需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であるために商標法4条1項10号に該当することを理由として、被上告人に対する本件各商標権の行使が許されない旨をいうものであるから、上記のような権利濫用の抗弁の主張を含むものと解される。」

 ④ 商標法4条1項10号該当性を否定
  「以上によれば、平成17年登録商標について商標登録に係る不正競争の目的の有無を明らかにしないまま本件規定に係る抗弁を認めた原審の判断には誤りがあるものの、本件における被上告人の主張は・・・権利濫用の抗弁の主張を含むものと解されるから、平成17年登録商標についても、商標登録に係る不正競争の目的の有無を問わず、商標法4条1項10号該当性に関する原審の判断の適否を検討すべきことになる。」
  「そこで、本件各登録商標の商標法4条1項10号該当性についてみると、・・・被上告人による本件湯沸器の広告宣伝や販売等の状況に照らし、被上告人使用商標が、本件各登録商標に係る商標登録の出願時までに、日本国内の広範囲にわたって取引者等の間に知られるようになったとは直ちにいうことができない。したがって、被上告人による本件湯沸器の具体的な販売状況等について十分に審理することなく、原審摘示の事情のみをもって直ちに、被上告人使用商標が商標法4条1項10号にいう「需要者の間に広く認識されている」商標に当たるとして、本件各登録商標につき同号該当性を認めた原審の判断には、法令の適用を誤った違法があるというべきである。」※7

Ⅳ 不正競争防止法2条1項1号の「需要者の間に広く認識されている」要件の充足を否定した点について

1 問題の所在
 不正競争防止法2条1項1号は、「需要者の間に広く認識されている」他人の商品等表示と類似する商品等表示を使用して混同のおそれを招来する行為を規律する。このうち、「需要者の間に広く認識されている」という要件は、講学上、周知性の要件と呼ばれている。本判決は、1993年の不正競争防止法全面改正の際に文言が改められたこの要件に関する初めての最高裁判決である※8
 本判決は、「被上告人が被上告人使用商標を使用して販売している本件湯沸器は、商品の内容や取引の実情等に照らして、その販売地域が一定の地域に限定されるものとはいえず、日本国内の広範囲にわたるものであることがうかがわれる」ことを指摘したうえで、原判決認定の事情からは直ちに「被上告人使用商標が日本国内の広範囲にわたって取引者等の間に知られるようになったということはできない」と判示した(下線強調は筆者による)。
  下線を引いた上記文言中、後半部分だけを一読すると、本判決が、周知性要件の充足のためには「日本国内の広範囲にわたって取引者等の間に知られる」ようになっていることを要求しているように読めるかもしれない。しかし、判旨は、上記の文言上、下線を引いた前半部分も合わせて読む必要があり、そうする場合には、周知性要件に関する従前の下級審の裁判例でも例外的に広範囲にわたる認知度が必要とされていた類型を扱うものであり、最高裁もそのことを前提としていることが分かるだろう。

2 従前の裁判例※9

 1) 狭小な地域における周知性の肯定例従前の下級審の裁判例では、狭小な地域で周知であるに止まる場合にも、周知性の要件の充足が肯定されていた。
  たとえば、青森県八戸地区で被疑違反者が類似の表示を使用して製品を販売したという事案で、青森県八戸地区における周知性を肯定した判決(大阪地判昭和51.4.30無体集8巻1号161頁〔WestlawJapan文献番号1976WLJPCA04300014〕[ピオビタンA])、被疑違反者の所在地は中央区八丁堀という事案で、東京都中央区を中心とする地域における周知性を肯定した判決(東京地判昭和37.11.28下民13巻11号2395頁〔WestlawJapan文献番号1962WLJPCA11280003〕[京橋中央病院])、被疑違反者の店舗の所在地は原告の本店所在地から徒歩5分程度の距離にあり、原告の配達区域及びチラシ配布地域内であったという事案で、東京都江東区、墨田区及びこれらの周辺地域における周知性を肯定した判決(東京地判平成17.3.23平成16(ワ)20488〔WestlawJapan文献番号2005WLJPCA03230014〕[酒類五分利屋]、知財高判平成17.10.13平成17(ネ)10074〔WestlawJapan文献番号2005WLJPCA10139001〕[同])、被疑違反者は佐世保市内で営業していたという事案で、同市内における周知性を肯定した判決(長崎地佐世保支判昭和41.2.21不競判843頁〔WestlawJapan文献番号1966WLJPCA02216001〕[山縣西部駐車場])など。
 2) 保護の範囲
  このように周知性の地域が限定した範囲で認められる場合、その保護の範囲も当該周知の地域に限られる、と理解されている。その理を示す好例が、横浜地判昭和58.12.9無体集15巻3号802頁〔WestlawJapan文献番号1983WLJPCA12090001〕[かつれつあん]である。そこでは、横浜市のとんかつ料理のチェーン店「勝烈庵」が、鎌倉市大船の「かつれつ庵」と静岡県富士市の「かつれつあん」に対して差止等を請求したという事件で、鎌倉市大船においては原告の営業表示「勝烈庵」を周知であると認められて「かつれつ庵」に対する請求が認容されているが、静岡県富士市においては周知であると認められず「かつれつあん」に対する請求が棄却されている。
  以上のように、周知性は一定の地域において知られていれば足り、その保護の範囲は周知である地域にのみ及ぶと解されるとすると、商品等表示が示す商品等主体の側が請求をなす場合に主張、立証する必要があるのは、類似表示の使用者の営業地域における周知性だということになる※10。不正競争防止法2条1項1号にいう「需要者」とは類似表示使用者の「需要者」であるということになる※11
 3) 周知の程度
このように、一定範囲で周知であると認められたとしても、その保護が及ぶ範囲は限定されるのだとすれば、周知性要件の水準を低くすることによって保護の範囲が不当に拡大することを慮る必要はないことになる。むしろ、周知性要件の水準を高くとりすぎることにより、一定範囲でとはいえ周知であり有意な混同が生じるおそれがあるにも関わらず、それを放置するような結論をとることのほうが問題であろう。
  実際、これまでの裁判例では、後述する例外類型を除けば、識別力のある表示を用いて営業していれば、それだけで相応の範囲で表示が周知となるものと取り扱われてきた※12
 たとえば、「万屋食品株式会社」の商号の下、調味料、酒類、飲料水、乾物類の卸売、小売りを主業として伊勢市内に本店と志摩営業所を営んでいる原告が、「株式会社万屋薬品」の商号の下、医薬品、化粧品、食品、雑貨等を販売する被告(平成5年現在、8店舗を経営、年商22億円)に対して、商号の使用差止等を求めたという事件で、裁判所は、原告の営業の起源が明治時代に遡ることと、平成3年の年商が11億円であるという事実のみを斟酌して、伊勢市およびその周辺部における原告の商号の周知性を肯定する判決がある(津地判平成7.9.12判不競810ノ252ノ6頁〔WestlawJapan文献番号1995WLJPCA09126001〕[万屋薬品])※13
 4) 例外類型
  ただし、このような一般論が通用せず、より子細な証拠に基づいた主張、立証が必要とされる事案類型も存在する。
  第一に、当該業種にありがちな表示であったり、商品の容器、形態等そもそも商品表示として機能することを予定されていないものであったりするために、需要者に識別表示として観念されることを要する表示に関しては、それが商品等表示として周知となるためには、特段の事情が示される必要がある※14
  第二に、被告の営業が広い地域で展開されていたり、原告の営業地域から離れたところで展開されている場合には、被告の営業地域まで及ぶ周知性などを立証するために、やはり特段の事情が示される必要がある※15
  第三に、特定地域に偏ることなく薄く広く商品が販売されていたり、営業が展開されていたりするために、最低限の周知性を満たしている地域がどこにもない場合には、周知性が否定される(東京地判平成16.12.10平成15(ワ)24414〔WestlawJapan文献番号2004WLJPCA12100007〕[スーパーフレックス](傍論)、知財高判平成17.6.30平成17(ネ)10061〔WestlawJapan文献番号2005WLJPCA06300014〕[同](傍論)、東京地判平成22.4.23平成21(ワ)16809〔WestlawJapan文献番号2010WLJPCA04239001〕[元気健康本舗genki21](傍論))。その場合、どこか特定の地域について際立って表示が広く知られているとはいいがたいために、全国的に周知であると主張するほかなく、その結果、全国的に周知とはいえないという判断が下ることがある。
  たとえば、人材派遣事業につき、全国の売上高ランキング101位の企業の売上高の約8分の1の売上高に止まる場合に、東京都内に限定したとしても未だ周知でないとする判決がある(東京地判平成17.6.15平成16(ワ)24574〔WestlawJapan文献番号2005WLJPCA06150003〕[プロフェッショナルバンク])。これらの程度の規模の表示を回避しなければならないとすれば、場合によっては同業者ですら不測の不利益を被ることになりかねず、商標選定の自由を過度に害するということなのだろう※16
 この類型に該当する一つの典型例が、輸入商品である。その性質上、特定地域に偏在することなく広く薄く販売されることが少なくないからである。たとえば、希望小売価格1575円の韓国からの原告輸入石鹸につき、1年8ヶ月に1万1000個弱(1日平均20個以下)の売上げがあるに止まり、その後、「バイオセリシン」の名称が共通する被告商品が韓国から輸入販売され、市場で混在するにいたったという事件で、原告の販売先が全国に散在していること等を斟酌して、周知性を否定した判決(大阪地判平成17.9.26平成16(ワ)12713他〔WestlawJapan文献番号2005WLJPCA09260011〕[バイオセリシン美容石鹸])がある(その他の例に、大阪地判昭和62.11.30判不競494ノ134頁〔WestlawJapan文献番号1987WLJPCA11306001〕[STEFANO RICCI])。
  もちろん、全国的な市場を相手にしてもなお前述した程度の水準の認知度に到達しうると推認される場合には、周知性が肯定される。たとえば、原告製品の国内シェア平均2.3%、マシニングセンタ業界全37社中上位15位内(平成12年度は8位)の「キタムラ機械株式会社」の使用する「KITAMURA」について、工作機械関係者の間で、地域を限定することなく周知性が肯定されるのは(傍論で、東京地判平成16.5.28判時1868号121頁〔WestlawJapan文献番号2004WLJPCA05280005〕[KITAMURA MACHINE WORKS])、当然といえよう。

3 本判決の意義

 本判決は、日本国内の独占的販売代理店が輸入販売している米国法人製造の電気瞬間湯沸器に付された商品等表示につき、「その販売地域が一定の地域に限定されるものとはいえず、日本国内の広範囲にわたる」ことを斟酌したうえで、19年間にわたる1年当たりの広告宣伝費が140万円余、展示会費が81万円余に止まり、販売台数等の販売状況が不明である場合には、周知と認定することはできないとして、原判決を破棄している。
  前述したように、最高裁は、本件商品等表示が「日本国内の広範囲にわたって取引者等の間に知られるようになったということはできない」ことを理由に、原判決を破棄しているので、率然と読んでしまうと、周知性の要件につき、日本国内の広範囲にわたって知られていることを要しているように読めなくもない。しかし、判旨は、その前提として、本件の商品が「商品の内容や取引の実情等に照らして、その販売地域が一定の地域に限定されるものとはいえず、日本国内の広範囲にわたるものであることがうかがわれる」ということに言及しており、この説示の意味が問題となる。
  本件は、輸入商品であり、特定地域に偏在することなく薄く広く商品が販売されていた事案であり、前述した周知性の要件について格別の主張、立証が必要となる例外類型の一つ、すなわち、どこか特定の地域について際立って表示が広く知られているとはいいがたいために、全国的に周知であると主張するほかなかった事案(参照、前掲大阪地判[STEFANO RICCI]、前掲大阪地判[バイオセリシン美容石鹸])に該当する。
  最判の判旨中、「商品の内容や取引の実情等に照らして、その販売地域が一定の地域に限定されるものとはいえず、日本国内の広範囲にわたるものであることがうかがわれる」という部分は、このような本件の事案の特殊性を指摘するものと理解できる。したがって、本判決の射程は、この種の事案に及ぶに止まり、他の類型についてまで、一律に「日本国内の広範囲にわたって取引者等の間に知られるようになった」ということを要求するものではない。
  こうした特殊性に加えて、本判決は、周知性の要件に関する一般論を展開することを控えている。結論として、周知性要件に関する本判決は、特定の類型(しかも周知性が問題となる事案類型の全体に鑑みると例外的な類型)に関する判断を提供する事例判決に止まると理解すべきであろう。

Ⅴ 無効審判の除斥期間経過後に権利濫用の抗弁を認めた点について

1 問題の所在
 商標権侵害訴訟において、被疑侵害者側は、当該商標権に係る登録商標が無効審判により無効とされるべきものと認められる場合には、侵害の責任を免れうることが認められている(商標法39条、特許法104条の3)。講学上、無効の抗弁として知られている防御方法である※17。もっとも、商標登録の無効審判請求に対しては、5年の除斥期間が定められている(商標法47条、ただし、一定の無効理由に関しては、同条括弧書きにより、不正競争の目的ないし不正の目的により商標を受けた場合には除斥期間が適用されないことに注意)。そのため、除斥期間経過後も、商標権侵害訴訟で無効の抗弁が認められるか※18、あるいは、2004年改正により特許法104条の3の無効の抗弁が認められる前に、最判平成12.4.11民集54巻4号1368頁〔WestlawJapan文献番号2000WLJPCA04110001〕[半導体装置](キルビー事件)※19によって認められていた、無効理由があることが明らかな特許に基づく権利行使は権利の濫用とする法理(=キルビー抗弁)の適用があるのではないか※20、ということが問題となる。

 2 従前の裁判例

 この問題に関する従前の裁判例は分かれている。
  第一に、商標法39条、特許法104条の3の無効の抗弁が認められるか否かに関しては、否定説を前提としていると目されるものがある(知財高判平成18.11.6平成18(ネ)10031号〔WestlawJapan文献番号2006WLJPCA11069002〕[Future](不正競争の目的を認定し無効の抗弁を認めたので傍論)、東京地判平成19.10.25平成19年(ワ)5022号〔WestlawJapan文献番号2007WLJPCA10259003〕[モズライト](不正競争の目的を認定し無効の抗弁を認めたので傍論)、知財高判平成20.8.28判時2032号128頁〔WestlawJapan文献番号2008WLJPCA08289021〕[同](傍論))。
  もっとも、除斥期間を経過している事件で、商標法39条、特許法104条の3に基づく抗弁ではなく、無効理由のある登録商標に基づく権利行使が権利濫用となるという法律構成が主張されることがあり、その結果、この「権利濫用」について判示した判決がある。そのなかでは、「権利濫用」と構成しつつ「自己の業務に係る役務について使用をする商標」に該当せず、商標法3条1項柱書きの無効理由があることのみをもって、侵害を否定しており、実質的に無効の抗弁を認めたに等しい判決(東京地判平成24.2.28平成22(ワ)11604〔WestlawJapan文献番号2012WLJPCA02289014〕[グレイブガーデン])※21もあるが、他の裁判例では、この種の「権利濫用」は主張自体、許されないという立場をとっている(東京地判平成17.4.13平成16(ワ)17735〔WestlawJapan文献番号2005WLJPCA04130003〕[LEGACY]、東京地判平成19.12.21平成19(ワ)6214〔WestlawJapan文献番号2007WLJPCA12219002〕[マッキントッシュ](商標法4条1項15号該当性も否定したので傍論)。
  第二に、キルビー抗弁に関しては、否定説を前提としていると目されるもの(東京地判平成13.9.28判時1781号150頁〔WestlawJapan文献番号2001WLJPCA09280012〕[M/mosrite](不正競争の目的を認定し権利濫用の抗弁を認めたので傍論)、東京高判平成14.4.25平成13(ネ)5748〔WestlawJapan文献番号2002WLJPCA04250016〕[同](傍論))がある。
  以上、要するに、従前の裁判例では、例外はないわけではないが(前掲東京地判[グレイブガーデン])、無効審判請求の除斥期間経過後は無効の抗弁も、キルビー型の権利濫用の抗弁も認められないとするのが裁判例の趨勢であったということができる。

 3 本判決の意義

 そのようななか、本判決は、商標法4条1項10号の無効理由に関し除斥期間の経過後は商標法39条、特許法104条の3に基づく無効の抗弁を否定したが、返す刀で、「需要者の間に広く認識されている」主体に対する商標権の行使は権利濫用とする。無効の抗弁との違いは、無効の抗弁であると誰に対しても権利行使が否定されることになると思われるが、本判決の説く権利濫用の法理(以下、便宜上、「エマックス抗弁」と称する)によれば、「需要者の間に広く認識されている主体」以外の者に対しては権利行使をなしうるところにある。

 4 検討

 1) 除斥期間経過後の無効の抗弁の主張を否定した点について
 無効審判請求の除斥期間経過後も商標法39条、特許法104条の3に基づく無効の抗弁を認めたのでは、商標権者は商標権侵害訴訟で勝訴することできず、商標権の保護を受けることができないから、何のために除斥期間を設けたのか分からない。
  かりに何らかの不都合があるというのであれば、商標法4条1項10号が無効理由とされている場合には、商標権の取得の際に不正競争の目的があるのであれば、除斥期間は適用されないのであるから(商標法47条括弧書き)、この不正競争の目的のところで柔軟な解決を図ればよい。かりに、除斥期間の定め自体が不当であるというのであればそれは立法論に属する。ゆえに、除斥期間経過後は無効の抗弁は認めるべきではない。この点に関する本判決の説示は至当であると解される。
 2) 「需要者の間に広く認識されている」商標の主体に対する商標権の行使を権利濫用とした点について
ところが、本判決は返す刀で、本コラムのいうエマックス抗弁、すなわち、出願時点で「需要者の間に広く認識されている」商標の主体に対する商標権の行使は権利濫用に該当するという法理を認めた。
  しかし、前述したように、商標取得の際に不正競争の目的があれば無効審判の除斥期間はそもそも適用されない。
  また、「需要者の間に広く認識されている」主体が商標法32条1項の要件をみたすのであれば、先使用権が成立する。商標法4条1項10号の「需要者の間に広く認識されている」との要件と商標法32条1項の同じく「需要者の間に広く認識されている」という要件の異同については諸説があるが※22、商標法4条1項10号に該当するためにはより広範囲で周知とならなければならないとされることはあっても、その逆はない。したがって、この点に関する既存のいかなる説に立っても、商標法4条1項10号該当性が認められる場合には、商標法32条1項にも該当している。ゆえに、少なくとも「需要者の間に広く認識されている」範囲では、先使用者は表示を継続して使用しうるのであるから、エマックス最判の法理をあえて持ち出す意義に乏しい※23
  わずかに、先使用権が成立する範囲に関して「需要者の間に広く認識されている」範囲を越えた地域では使用することができないとする見解※24に与する場合には、商標法32条1項を援用するだけでは被疑侵害者が周知地域範囲外までに営業を拡大することができないのに対し、エマックス抗弁に関しては、これも解釈次第というところはあるが、あるいはその主張が可能であるという相違があるに止まる。しかし、逆にいえば、そのような場合に権利濫用の抗弁を認めることは、当該見解の下では、何のため商標法32条1項にかかる限定があるか分からなくなる。
  結論として、本判決がエマックス抗弁を導入したことは疑問であるといわざるを得ない※25※26

Ⅵ 商標法4条1項10号の「需要者の間に広く認識されている」要件の充足を否定した点について

 このように本判決はエマックス抗弁を認めることにより、かりに本件商標登録に商標法4条1項10号の無効理由が存する場合には、YのXに対する権利行使は権利濫用に該当するという抽象論を示したのであるが、他方で本件に関する具体的な当てはめのところでは、不正競争防止法2条1項1号の「需要者の間に広く認識されている」要件の充足を否定した説示を引用して、原判決の認定した事実のみから商標法4条1項10号にいう「需要者の間に広く認識されている」商標と認めることはできないと判示している。
  商標法4条1項10号に関しては、従前の裁判例では、全国的に広く知られている必要はないが、隣接数県程度で知られていることを要すると理解されている(東京高判昭和58.6.16無体集15巻2号501頁〔WestlawJapan文献番号1983WLJPCA06160005〕[DCC]、東京高判平成14.6.11平成13(行ケ)430〔WestlawJapan文献番号2002WLJPCA06110005〕[品川インターシテイ]、東京高判平成17.3.24判時1915号142頁〔WestlawJapan文献番号2005WLJPCA03240002〕[IE一橋学院]、知財高判平成27.12.24平成27(行ケ)10084[エマックス]、知財高判平成27.12.24平成27(行ケ)10083[エマックス EemaX])。具体的にも、徳島県のみならず少なくとも関西地方の取引者、需要者に広く認識されていた場合(知財高判平成22.2.17判時2088号138頁〔WestlawJapan文献番号2010WLJPCA02179001〕[ももいちごの里])、関東、中京、関西地域の需要者に広く認識されていた場合(東京高判平成11.2.9判時1679号140頁〔WestlawJapan文献番号1999WLJPCA02090004〕[串の坊])、関東地方を中心に北海道、東北および中部の各県にわたって、需要者である大学受験生の間に広く認識されていた場合(前掲東京高判[IE一橋学院])に、それぞれ商標法4条1項10号該当性が肯定されている。
  こうした従来の理解の下では、同じ文言が使われているとはいえ、前述したようにより狭小な地域で認識されていれば足りると解されている不正競争防止法2条1項1号の周知性の要件よりも、商標法4条1項10号の要件のほうが高度なものとなる※27。したがって、本判決が、不正競争防止法2条1項1号該当性を否定した以上、その判断を援用して商標法4条1項10号該当性を否定したことは、従前の裁判例の流れからすると、極めて自然な判断だということになる。もっとも、本判決は、商標法4条1項10号の判断基準や、不正競争防止法2条1項1号との関係について一般論を展開することなく、「被上告人による本件湯沸器の広告宣伝や販売等の状況に照らし、被上告人使用商標が、本件各登録商標に係る商標登録の出願時までに、日本国内の広範囲にわたって取引者等の間に知られるようになったとは直ちにいうことができない」と述べたに止まる。ゆえに、商標法4条1項10号該当性の点に関しては、本判決は事例判決の域を出ない。

Ⅶ 差戻審における処理について

 最後に、差戻審において本件がどのように処理されるのかということに触れておこう。
 本判決は、原判決摘示の事実の下では、不正競争防止法2条1項1号にも商標法4条1項10号にも該当しないと判示している。差戻審では、この最高裁の判断が前提とされる以上、一発逆転を可能とする重大な証拠が新たに示されない限り、これらの条文にいう「需要者の間に広く認識されている」の要件を満たすことは困難である。
  したがって、まず、XからYに対する不正競争防止法2条1項1号違反を理由とする請求に関しては、同号の「需要者の間に広く認識されている」要件を充足しないとされて、請求が棄却される可能性が高い。
  他方、YからXに対する商標権侵害を理由とする請求に関しては、Xは「需要者の間に広く認識されている」ことを要件とする商標法4条1項10号に基づく抗弁(エマックスの抗弁のほか、商標登録取得の際の不正競争の目的を主張立証したうえでの商標法39条、特許法104条の3に基づく無効の抗弁)も否定される可能性が高い。また、本判決は何も言及していないが、これまでの認定を前提とする限り、日本国内において広く薄く販売されているに過ぎないと目される本件商品に関して、特異的にどこかの地域で広く知られているということも想定しづらいから、おそらく、商標法32条1項に基づく先使用権の抗弁を主張することは困難であろう。
  しかし、こと後者の商標権侵害を理由とする請求に関しては、Xが主張しうる抗弁は上のものに限られない。たとえば、訴外米国A社(Eemax Inc.)の商標が外国において「需要者の間に広く認識されていること」を理由とする商標法4条1項19号違反を理由とする商標法39条、特許法104条の3に基づく無効の抗弁(商標法47条の除斥期間は適用されない)や、商標法4条1項7号の公序違反を理由とする商標法39条、特許法104条の3に基づく無効の抗弁※28が考えられる。そして、なによりも山本補充意見※29が示唆する、過去に和解を経由していることを含む本件特有の事情を斟酌した一般的な権利濫用の抗弁が成立する可能性がある※30

  ※ 本稿の作成に際しては、名古屋大学の鈴木將文教授から、本件に関するLaw & Technology77号掲載予定の未公表原稿をお見せいただいた。また、立命館大学の宮脇正晴教授、中村合同特許法律事務所の富岡英次弁護士からも、本件に関する示唆をいただいた。記して感謝申しあげる。

(掲載日 2017年9月11日)

  • 一部に誤解があるが、本件に関しては、上告受理決定において、不正競争防止法2条1項1号と商標法4条1項10号の解釈適用の誤りをいう部分「以外」に関する論旨(XのYに対する修理費支払請求にかかるもの)が排除されているとのことである(清水知恵子[判解]Law & Technology 76号65頁(2017年))。
  • その後、2006年6月に提起されたYのXに対する損害賠償請求訴訟において、2007年5月25日、両者間の販売代理店契約が同日現在において存在しないことの確認等を内容とする訴訟上の和解が成立している。
  • その間、2009年7月、XのYに対する不正競争防止法に基づく差止等請求訴訟が提起され、その控訴審において、2011年7月8日、Yが「エマックス」という商品名を使用しないことを誓約することなどを内容とする訴訟上の和解が成立している。
  • 周知性の認定に関する判示部分は以下のとおりである。

    「本件電子瞬間湯沸器は、平成6年11月頃に原告がその販売を開始したのと前後して、「エマックス」と表示されて複数回にわたって新聞等に取り上げられ、実演展示されるなどし、平成12年7月には、多数の企業等に販売されるに至っていたのであり(前記のとおり、清水建設の社内会報には、平成8年7月25日までに、マンション、事務所、病院等に1000台以上が販売された旨記載され、原告の営業用資料には、平成12年7月までに、157の企業等に対する販売実績がある旨記載されている。)、原告は、その広告宣伝等に相応の費用を支出していた。また、被告代表者であるP2も、原告と何らの人的ないし資本的なつながりも有していなかったにもかかわらず、平成15年秋頃、原告と、本件代理店契約の交渉に入り、原告代表者に宛てた同年11月28日付け書面(甲14)において、商号中に「エマックス」の文字を取り入れた被告の設立経緯を詫び、資金手当がつかなかった場合には、その商号から「エマックス」の名をはずす旨記載している。
     これらの事情によれば、原告がA社の製造販売する電子瞬間湯沸器(本件電子瞬間湯沸器)について日本国内で販売するに当たり使用する「エマックス」等表示は、遅くとも、P2が原告と本件電子瞬間湯沸器に関する日本国内販売代理店契約の交渉に入った平成15年秋頃までには、日本国内において、原告の商品等表示として、需要者の間に広く認識されるに至った(周知となった)ものと認められる。」
  • 控訴審でYは米国A社製の商品を並行輸入して販売していると主張し、それがXからの不正競争防止法2条1項1号違反に対する抗弁となりうるかが争点となり、裁判所はこれを退けている。米国A社製の商品は、日本向けの電圧仕様となっていないために機器故障のリスクがあることは否定しがたく、Xが周知表示を付して流通に置いている製品はこのようなリスクに対する措置が講じられているために品質に差異があるから、品質保証機能を害し、しかも真正品の製造業者であるA社が、電子瞬間湯沸器のYへの流通を阻止する態度をとっていることを理由とする。
      この点は、それが同一の出所と目されるところから拡布されているものであるとしても、国内で流通している「正規品」と並行輸入にかかる商品の間で品質に差異がある場合、不正競争防止法2条1項1号違反に対する防御方法として、真正商品の並行輸入であることを主張することが許されるのか、という論点に関わっている。本件の最高裁で扱われていないので、紙幅の都合上、論評は省略するが、商標権侵害に関し免責されることに変わりはないと主張するものとして、田村善之「商標法の保護法益」同『ライブ講義知的財産法』(2012年・弘文堂)126~131頁、本件に即した論述として、鈴木將文[判批]Law & Technology 77号掲載予定を参照されたい。
  • 関連する判示部分は以下のとおりである。

    「商標法4条1項10号にいう「広く認識されている」とは、業務に係る商品等とこれと競合する商品等とを合わせた市場において、その需要者又は取引者として想定される者に対して、当該業務に係る商品等の出所が周知されていることであり、その周知の程度は、全国的に知られているまでの必要性はないものの、通常、一地方、すなわち、一県の全域及び隣接の数県を含む程度の地理的範囲で知られている必要があると解される。」 「被告が本件電子瞬間湯沸器の販売を開始したと認められる平成7年5月から、本件商標の登録査定がされた平成17年8月までの間においては、〔1〕被告が、自ら引用商標と共に本件電子瞬間湯沸器の宣伝広告をしたのは、わずかに2回であること、〔2〕引用商標と共に本件電子瞬間湯沸器が新聞・雑誌及びテレビ放送に取り上げられたことは8回であって、必ずしも多数といえないばかりか、それらは、平成6年~平成9年と平成14年~平成16年の2つに分かれるなど、離散して取り上げられたにすぎないこと、〔3〕被告が引用商標と共に本件電子瞬間湯沸器の実演展示をしたことは31回あるものの、これは、年平均では約3回にすぎず、その場所もおおむね西日本各地に散在していること、〔4〕被告による当該期間における本件瞬間湯沸器の販売台数は、全く明らかにされておらず、新聞記事等から推測される販売台数は年間数百台程度であり((1)エ〔1〕は、被告の取引先の社内報であり、客観的裏付けを欠くものと解される。)、需要者又は取引者の範囲を家庭用の壁掛型の瞬間湯沸器の需要者又は取引者とした場合、一見して僅少であること(なお、本件電子瞬間湯沸器には、「EemaX」との引用商標と類似する標章が付されていたことは推認できる。)、また、その納入先も全国に散在しているとみられ、特定の傾向はないこと、〔5〕被告により開示された広告宣伝費及び展示会費は、引用商標を付した本件電子瞬間湯沸器に係る費用に限定されない会社全体としての宣伝広告費及び展示会費である上、金額も、前者は百万円台、後者は百万円以下が多く、壁掛型瞬間湯沸器という全国的な市場において需要者又は取引者に印象を残すための費用としては、明らかに少ないものであること、以上の事実を導くことができる。
     そうすると、本件証拠上、被告自身による引用商標に関する宣伝広告等は活発とはいえない上、新聞・雑誌等によりこれが報道された機会も少ないと認められる一方、引用商標を付した本件電子瞬間湯沸器の販売台数等は明らかではなく、全国的規模の市場に対する販売実績は極めて少ないものと推測される。このような宣伝広告及び販売実績等を考慮すると、家庭用の壁掛型の瞬間湯沸器又は電気を熱源とする同瞬間湯沸器の市場規模を子細に確定するまでもなく、いずれの引用商標も、本件商標の登録査定時において周知性を有していたとは認め難い。なお、被告が自社ホームページで宣伝活動をしたことは、ホームページを開設することが誰でも直ちに行える以上、それのみで周知性を裏付けるものとはならない。そのほか被告のるる主張するところも、採用することはできず、上記適示した証拠以外の証拠も、上記認定を左右するものではない。」
  • 本判決には、山崎敏充補足意見が付されている。そこでは、以下のように、本件の当事者の関係や過去における訴訟の経緯等の事情を含めた諸般の事情を考慮した権利濫用の判断が、差戻後になされるべきことが示唆されている。「権利の濫用の有無は、当該事案に表れた諸般の事情を総合的に考慮して判断されるべきものであって、このことは、商標権の行使について権利の濫用の有無が争われる場合であっても異なるものではない。もっとも、商標権は、発明や著作などの創作行為がなくても取得できる権利であることなどから、その行使が権利の濫用に当たるとされた事例はこれまでに少なからずみられるところであり、こうした事例の中から、権利の濫用と判断される場合をある程度類型化して捉えることは可能であろう。法廷意見において、商標法4条1項10号に違反して商標登録がされた場合に、その登録商標と同一又は類似の商標につき自己の業務に係る商品等を表示するものとしての同号の周知性を有している者に対して商標権を行使することにつき、特段の事情がない限り権利の濫用に当たるとされているのも、権利の濫用と判断される場合の一つの類型化された事例を示すものとして位置付けることができよう。
      ところで、原審の認定するところによると、被上告人は、本件湯沸器を製造する米国法人であるA社との間で日本国内における独占的な販売代理店契約を締結し、被上告人使用商標を使用して本件湯沸器の販売を行っている者であり、上告人は、被上告人との間で本件湯沸器の販売代理店契約を締結したが、その後契約関係が解消され、独自に本件湯沸器を輸入して日本国内における販売をしている者であるところ、上告人による本件湯沸器の販売をめぐっては本件訴訟以前にも2度にわたり被上告人との間で訴訟が係属し、その2度目の訴訟では、上告人の商標使用行為が不正競争防止法2条1項1号に該当する旨の第1審判決を経て、控訴審において、上告人が「エマックス」という商品名を使用しないことを誓約する旨の訴訟上の和解が成立している。このような上告人と被上告人との関係や過去における訴訟の経緯等の事情は、上告人による商標権の行使が権利の濫用に当たるか否かを判断するについて有意の関連を有するものであり、被上告人は、本件において、上告人による商標権の行使が権利の濫用に当たるとして、これらの事情をそれを基礎付ける事情として主張しているものとみることができる。
      原審は、被上告人が権利の濫用を基礎付ける事情として主張している諸般の事情のうち、登録商標の商標法4条1項10号該当性に関する事情に基づいて、本件各商標権の行使は許されないと判断し、法廷意見は、その判断を是認し得ないものとして、本件を原審に差し戻すこととしたものである。そうすると、差戻し後の審理において、仮に、本件各登録商標の商標法4条1項10号該当を理由とする権利の濫用が認められないこととなった場合には、原審において未だ判断がされていない上告人と被上告人との関係や過去における訴訟の経緯等の事情を含めた諸般の事情を考慮した上で、改めて上告人の本件各商標権の行使が権利の濫用に当たるか否かが審理判断されるべきことになる。」
  • 周知性の要件が「本法施行ノ地域内ニ於テ広ク認識セラルル」と定められていた旧不正競争防止法1条1項1号に関しては、刑事事件において、日本全国でなくとも中部地方で広く知られていれば足りるとした原判決を維持した決定として、最決昭和34.5.20刑集13巻5号755頁〔WestlawJapan文献番号1959WLJPCA05200007〕[ニューアマモト]があるが、いわゆる三行半に近い決定であり、括弧書きで「(なお、不正競争防止法一条一号にいう「本法施行ノ地域内ニ於テ広ク認識セラルル」の意義についての原解釈および本件を同条同号同法五条二号の罪にあたるとした原判断は正当である。)」と言及したに止まる。この決定は、旧不正競争防止法1条1項1号の解釈として、日本全国で知られている必要はないと考えていることが伺われるが、それ以上に周知性の要件の外延が明確化されたわけではない。なお、旧不正競争防止法時代の裁判例に関しては、田村善之「周知性要件の意義」判例タイムズ793号10~16頁(1993年)、不正競争防止法1条1993年の文言改正の意義については、同『不正競争法概説』(第2版・2003年・有斐閣)37・43~44頁。
  • その文言の相違に関わらず、1993年改正の前後で周知性の要件の実体に変化はないと考えるのが一般的であるので、本コラムでは、以下、改正前の裁判例も先例として紹介する。
  • 田村/前掲注8・判例タイムズ793号13頁。
  • 田村・前掲注8不正競争法概説43~44頁。
  • 田村善之「裁判例にみる不正競争防止法2条1項1号における規範的判断の浸食」『知的財産法の理論と現代的課題』(中山信弘還暦・2005年・弘文堂)404頁。
  • ただし、営業活動が成立するためには自ずと最小限の地域的範囲の単位というものがあるから、その範囲内で周知となる必要はあるというべきだろう。最低限の営業範囲で知られていなければ保護に値する信用が形成されたとはいいがたい反面、その種の限定を付さないと、いたずらに他者の表示を迂回する必要が生じ、商品等表示選定の自由が過度に害されかねないからである(田村・前掲注8不正競争法概説40~41頁)。そして、ここでの問題が類似表示使用者の営業活動を徒に停滞させないことにある以上、類似表示の使用者の営業地域において周知性を満たす必要があると考えられる。たとえばワインのような一般的な小売商品に関しては、他者のフランス料理店を示す類似表示が乃木坂とその周辺のみで周知であったとしても、それを理由に当該地域での表示の使用を止められてしまうのでは、出荷活動やTVCMや新聞雑誌の紙面での広告活動に支障を来しかねず、ゆえに当該他者の類似表示の周知性は否定すべきである(結論として、東京地判平成21.5.14平成20(ワ)2305[シェピエール]。しかし、出荷や広告等に関して地域ごとに分割しうる可能性を考慮する場合には、もう少し広い地方単位程度のまとまりの範囲で、他者の類似表示が周知であれば請求が(一部)認容される可能性もありえたというべきであろう)(時井真[判批]知的財産法政策学研究26号324~326頁(2010年))。
  • 田村・前掲注8不正競争法概説44~45頁、同/前掲注12・406~407頁。
  • 田村・前掲注8不正競争法概説45頁、同/前掲注12・405~406頁
  • 川村明日香[判批]知的財産法政策学研究11号241~242頁(2006年)。
  • 一般に特許法104条の3の防御方法は、無効の「抗弁」と呼ばれているが、それは便宜上の呼び名であって、通常の意味での抗弁、すなわち、証明責任を被疑侵害者側が負担するという意味での抗弁ではないことにつき、参照、飯村敏明「発明の要旨認定と技術的範囲の解釈、さらに均等論の活用」パテント64巻14号67頁(2011年)、時井真「冒認出願及び記載要件に関する証明責任をめぐる諸問題」知的財産法政策学研究38号142頁(2012年)。
  • 否定説として、渋谷達紀『知的財産法講義Ⅲ』(第2版・2008年・有斐閣)481頁、工藤莞司[判批]判例時報1928号178~179頁(2006年)、森義之[判批]中山信弘=大渕哲也=茶園成樹=田村善之編『商標・意匠・不正競争判例百選』67頁(2007年・有斐閣)、清水節「無効の抗弁」飯村敏明=設樂隆一編『知的財産関係訴訟』133頁(2008年・青林書院)、茶園成樹「無効理由を有する商標権の行使」Law & Technology 43号54頁(2009年)、宮脇正晴「商標法におけるキルビー抗弁・権利行使制限の抗弁(特104条の3抗弁)に関する問題点」パテント63巻別冊2号246頁(2010年)、眞島宏明/金井重彦=鈴木將文=松嶋隆弘編『商標法コンメンタール』(2015年・レクシスネクシス・ジャパン)742頁、村林隆一=井上裕史/小野昌延編『新注解商標法(下巻)』(2016年・青林書院)1411頁、鈴木/前掲注5。
  • 参照、田村善之[判批]知財管理50巻12号1847~1866頁(2000年)。
  • 肯定説として、髙部眞規子「特許法104条の3を考える」知的財産法政策学研究11号135頁(2006年)。否定説として、田村善之『商標法概説』(第2版・2000年・弘文堂)313頁、渋谷・前掲注18・482頁、森/前掲注18・67頁、清水/前掲注18・133頁、茶園/前掲注18・54頁、宮脇/前掲246~247頁、眞島/前掲注18・742頁、村林=井上/前掲注18・1411頁、鈴木/前掲注5。
  • この判決は、「権利濫用」と構成するが、キルビー抗弁の明らか要件に言及していないばかりか、無効理由があるとの認定のみをもって権利濫用を肯定しており、その実質は、特許法104条の3の無効の抗弁を認めたに等しい。
  • 田村善之「需要者の間で広く認識されている商標」発明91巻8号96~103頁(1994年)、同・前掲注20・52~56頁、80~83頁。
  • この他、先使用に基づく場合には、商標権者から混同防止措置を請求されうる(商標法32条2項)という違いもある(鈴木/前掲注5は、本判決のエマックス抗弁は、この公益に関わる混同防止措置請求権を潜脱する効果を有するがゆえに、商標法の趣旨に反する旨を指摘する)。また、先使用を主張するには、先使用者に不正競争の目的がないことが要件とされているが(商標法32条1項)、エマックス抗弁の下でも、先使用者にそのような目的があることが「特段の事情」として斟酌され、結局、同抗弁が否定されることがありえよう。なお、理屈をいえば、商標法4条1項10号の要件の判断基準時は出願時と登録時(商標法4条3項)、商標法32条1項のそれは出願時であるが、出願時に「需要者の間に広く認識されている」にも関わらず、登録時に該当しなくなった場合(商標法4条1項10号の無効理由はないことになる)、商標法32条1項に関しても「継続して」使用という要件を満たさなくなっている場合がほとんどであろうから、議論の実益は乏しいように思われる。
  • 田村・前掲注20・83頁。反対、田中芳樹「商標法32条1項の先使用権の認められる範囲」Law & Technology別冊1号88~89頁(2015年)。
  • 鈴木/前掲注5。
  • なお、筆者は、出願時点ではなく、侵害訴訟の基準時において全国的に広く知られている表示の主体に対しては、もはや登録主義を貫徹する意義を失っていることから、登録主義の究極の趣旨に鑑みて、商標権者の権利行使を権利濫用とする立場をとっているが(田村・前掲注20・89~91頁、同/前掲注5・117~126頁、なお、東京地判平成11・4・28判時1691号136頁〔WestlawJapan文献番号1999WLJPCA04280001〕[ウィルスバスター])、出願時点のしかも全国周知ではなく商標法4条1項10号の認知度に焦点を当てるエマックス抗弁とは趣旨、要件を異にする。
  • ゆえに、筆者は商標法4条1項10号の「需要者の間に広く認識されている」要件を「広知性」と読んで、文言上も周知性と区別している(同/前掲注22発明91巻8号98頁、他に、宮脇正晴/平嶋竜太=宮脇正晴=蘆立順美『入門知的財産法』(2016年・有斐閣)249頁)。
  • ただし、同号が商標法4条1項19号の落ち穂拾いとして機能することに対しては、知財高判平成20.6.28平成19(行ケ)10392〔WestlawJapan文献番号2008WLJPCA06269006〕[コンマー]が否定的な判断を下している。
  • 前掲注7参照。
  • 従前から、学説においても、無効審判請求の除斥期間経過後はキルビー抗弁による権利濫用の法理の適用は否定されるべきであるとしても、諸般の事情を考慮した一般の権利濫用法理の適用がありうることが指摘されていた(森/前掲注18・67頁、清水/前掲注18・133頁、村林=井上/前掲注18・1411頁)。

(掲載日 2017年9月11日)

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