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文献番号 2014WLJCC014
西村あさひ法律事務所
弁護士 細野敦
既に最高裁※2は、新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は、当該確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって、当該確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有するとの判断を示していた※3。しかし、本件決定は、同様の状況にある株式会社の解散の訴えの場面につき、単に当事者の一方の請求に対して訴え却下又は請求棄却の判決を求めるのみの参加の申出は許されない※4との独立当事者参加の理論により、原告適格を否定した。
本件判決により判例として確定したとはいえ、山浦判事の反対意見と金築判事の意見があるとおり、その説示は、今後の独立当事者参加、特に詐害防止参加の要件の解釈に多分に含みを残す内容となっており、今後の裁判例・学説によるさらなる理論的深化も予想される。詳細な検討は別途行うこととし、とりあえず、今回は、多数意見と少数意見を分けた分水嶺を概観しておこう。
適法に独立当事者参加の申出を行うために、自らの請求を定立しなければならないかどうかという点については、多数意見に賛成する金築判事も、「請求を定立しない独立当事者参加を許容することによって、何らかの具体的な弊害が生ずることが一般的に予想されるのかどうか、明らかではないように思われる」などとして、「詐害防止参加に関する限り、常に請求の定立が必要であるとまで解しなければならないか、若干の疑問を持つ」とする。そして、「独立当事者参加について、判例上いわゆる三面訴訟説が採られていた時代には、請求の定立を不要とすることは理論上難しかったかもしれないが、現行民訴法が当事者の一方だけを相手方とする独立当事者参加も許容している現在、この点を柔軟に考える余地が生じているのではあるまいか」※5と踏み込んだ解釈を示している。しかし、このように詐害防止参加における請求の定立に関し否定的な見解を示す金築判事でさえも、本件株式会社解散の訴えに係る認容確定判決に関しては、最終的に、会社法834条20号が、株式会社の解散の訴えの被告適格を「当該株式会社」と法定しており、株主は訴えの被告適格を有しないから、株主が、単に訴えの却下又は請求棄却を求めて、被告の立場で解散訴訟に独立当事者参加の申出をする余地がないという「立法政策の結果」から、申立人の原告適格を否定する結論はやむを得ないとする。
そうすると、詐害防止参加において請求の定立を要しないとして、反対意見の立場をとる山浦判事は、金築判事の指摘する「立法政策の結果」をどのように理論的に克服しているのであろうか。山浦判事は、株式会社解散の訴えの被告適格に関してよりきめ細かく立法趣旨に分け入り、その実質に鋭く切り込む。すなわち、会社法834条20号が、株式会社に被告適格を与えているのは、訴訟の結果に最も密接な利害関係を有する当該株式会社が最も充実した訴訟活動をすることが期待できる上、当該株式会社の解散に反対する多数派株主が、当該株式会社の意思決定に関与するなどして、実質的に当該訴訟に関与し、株主に対する手続保障も確保されている、と見るのである。しかし、株式会社の解散に賛成する株主が多数を占める状態で、株式会社の解散の訴えが提起され、当該株式会社の解散に反対する少数派株主に当該訴え提起の事実さえ知らされないまま馴れ合いで当該訴訟が追行され、少数派株主に対する実質的な手続保障に欠けるという本件のような事態が生じることは会社法の予定しないこと、と考えるのである。
要は、多数意見と反対意見の分かれ目は、会社法834条20号の被告適格がどこまでの事態を想定して立法されたか、ということに尽き、多数意見の金築判事が「立法政策の結果」と述べていることからすると、多数意見は、立法者意思か文理を重視したものと推測されるが※6、いずれにせよ、立法者の意思が明らかでなければ、文理解釈、論理解釈、目的論的解釈など法解釈論に係るあらゆる解釈方法を総合考慮することになり、その結果が、多数意見であり、会社法834条20号につき山浦判事のような解釈をすることを否定した、ということになるのであろう※7。
そもそも独立当事者参加における参加人による請求の定立に関しては、少なくとも当事者の一方に対する請求の定立が必要との通説※8と、一方当事者との関係でも参加人が請求を定立する必要がなく、原告の被告に対する訴えの却下や請求の棄却を求めれば足りるとする有力説※9が、鋭く対立しており※10、本件決定による今後のさらなる裁判例・学説の深化・発展が期待されるところである。
(掲載日 2014年9月16日)