― まず、所属部署の社内における位置づけについて、教えてください。
わたしが所属する「損害サービス本部」は2つに分かれ、お客様から交通事故の報告を受けてから、保険金をお支払いするまで、実際に作業を進める「損害サービス部」と、彼らの作業の全プロセスを管理する「損害サービス業務部」で構成されています。
現業作業のプロセス全体を管理する「損害サービス業務部」のなかには、事務マニュアルをはじめ、あらゆる作業プロセスを作成する「企画課」、そのプロセス通りに作業が実行されているかをチェックする「検査課」、各種統計資料を作ったり、日常的に現場を管理する「管理課」の3つがありますが、プロセスを管理すべき作業内容のひとつとして、数カ月に1回、「われわれの会社は、これぐらいの保険金額を、支払う必要がありますよ」と報告する作業があります。
この金額を「支払備金」といいますが、その積算のプロセスとして具体的に、データベース(DB)を使って、事務マニュアルのみでなく、判例の動向を調べたうえで、蓋然性のある損害額をしっかり計測して、支払い備金を報告してください、と手順を定めています。したがって「支払い備金」積算のプロセス上、判例DBのクオリティは「損害サービス業務部」にとって大きな関心事だったといえます。
― これまではどのようなDBを活用していたのでしょう。
業界の定番のCD-ROMの貸し出しを受け、そこから、必要な判例を取得する方法です。しかし、当社は本部(東京都台東区)、新横浜、福井市の3ヵ所にサービスセンターを構えています。このため業務フローは、たとえば新横浜が判例情報を欲しいときには、本部から新横浜にCD-ROMを貸す、あるいは本部が新横浜から必要な情報を聞き出し、本部が検索を代行する、といった流れになります。
CD-ROMの移送には当然時間がかかりますし、代行者の検索は精度が落ちるので、ピンポイントの判例入手に手間取ってしまいます。当社は今後も全国にサービスセンターを展開し、業務を拡大していく予定です。CD-ROMを複数拠点で使い回すやり方のままでは、コスト高になるか、業務が非効率になるかのいずれかでしたので、見直す必要があると思っていました。
そんなとき、ウエストローの『交通事故損害賠償データファイル』の存在を知りました。ウェブで判例を検索するDBなので、それぞれのサービスセンターにとって好都合です。作業スピードが高まり、サービスセンターにおける検索精度が向上するに違いない、と。これがウエストローに変更した第1の理由です。加えて、判例の更新速度が速く、つねに最新の判例が入手できる点も第2のメリットといえるでしょう。現在、本部で1つ、他拠点で5つのIDを保有し、運用しています。
─実際に使用されてみて、情報の内容面でどのような印象ですか。
6カ月ほど使用してきましたが、従来利用していたツールより「対人系」情報に強いDBだと感じています。
損害保険会社が必要とする判例情報は大きく、「事故の責任割合」と「損害認定」に分かれます。たとえば事故の当事者Aの過失は70%、Bの過失は30%などと、「過失割合」(事故責任割合)を決めるのが「事故の責任割合」で対物系の担当者の利用頻度が高い情報です。この情報は、右折対直進の場合、出会いがしらの場合、などほとんどがパターン化されています。『判例タイムズ』(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準)を見ればすぐわかりますので、DBにまで当たる必要があるケースは、かならずしも多くありません。
これに対して「損害認定」の情報とは、後遺障害の損害認定や事故との因果関係が認められる損害の範囲などに関する情報等です。すなわち「どのような後遺障害が残った場合に、どの程度の補償をすべきか」や「このような損害は認定して払うべきか」を示した判例の積み重ねが情報として必要になります。たとえば右腕に後遺障害が残り、労働能力の喪失率、喪失期間がコレコレだと、補償額はいくら、といった判例データです。こうした情報は対人系の担当者が知りたいわけです。この情報量がウエストローの『交通事故損害賠償データファイル』は圧倒的に多い。
─業務にはなにかインパクトがありましたか。
「対人系」「対物系」のどちらが重要、と一概にはいえません。ただ「対人系」のほうが、我々、損保会社が支払う金額規模が大きくなりがちです。したがって金額算定の重要度が「対人系」のほうが大きい。損害額を計測するタイミングで、過去判例に照らして、しっかりと蓋然性の高い損害額を算定しなくてはなりません。
従来、こうした対人系の後遺障害関連データは、紙ベースでの限られた情報の中で対応しており、イレギュラーなケースでは弁護士事務所に依頼して判例データを入手していました。今はウエストローのDBで検索できるので、弁護士事務所にお願いするケースは明らかに減ってきました。利便性と作業効率はかなり高まったといえるでしょう。この意味で、「損害認定」情報に強いDBの存在意義は大きいと思います。