Westlaw Japan 導入事例Westlaw Japan 顧客事例紹介(IHI)/河合敏男法律事務所, 河合敏男 弁護士

判例DBは、裁判官の発想を学ぶ最良のツール 判決から「法理」読み解き、対応策を検討判例DBは、裁判官の発想を学ぶ最良のツール 判決から「法理」読み解き、対応策を検討

― コーポレート法務グループの業務について教えてください。

石川  法務部は事業法務G(20人)とコーポレート法務G(6人)に分かれています。営業面の契約審査をしているのが事業法務G、それ以外がコーポレート法務Gになります。ただし、知財法関連は知的財産部、労働法関連は人事部と、別の部署が担当しています。
「コーポレート」の名前から連想されるように、会社経営の判断に対して、リーガルな面からその判断をチェックするのが第1の業務です。たとえば当社は数年前、執行役員制度を導入しましたが、そのときには法的な観点から、取締役と執行役の役割分担について検討しました。
第2の業務は、経営を揺るがしかねないクライシスに対し法的側面から対応することです。たとえば独禁法違反や金商法に関する各種問題などへの対応がこれに当たります。

攻守両面で経営判断をサポート

石川  これら2つが「守りの法務」だとすると、3つ目の業務は「攻めの法務」、すなわちM&A対応になります。IHIグループ内の子会社同士の再編を含めて、手続きや契約書関連はコーポレート法務Gが担当します。
営業契約以外の案件は、コーポレート法務Gの仕事になりますので、たとえば2006年の本社移転にも深くかかわりました。現在の本社ビル(江東区豊洲)は底地をIHIが保有。それを信託銀行に不動産信託し、IHIが得た信託受益権をSPC(特別目的会社)に売却し、SPCが銀行から資金を集めてビルを建築、そこに店子としてIHIが入居しています。こうした不動産の取得・賃貸に関するスキームの検討もコーポレート法務Gの仕事です。

― 日本法データベース〈Westlaw Japan〉は どのように活用を。

石川  グループ長として、判例DBとは「裁判官の発想を学ぶツール」だと思っています。訴訟案件に対して、裁判官はどのような発想で分析し、どのような筋道を通って、どう結論するのかを理解するためのツールです。「裁判官の発想」は時代によって変化しますから、直近時点の「発想パターン」を読み取るためには、DBは判例の更新のスピードと頻度が重要になります。この点、〈Westlaw Japan〉はすぐれていますね。

複数IDでも 柔軟に同時ログイン

横田  スタッフとして、自分の担当する案件に関連する過去事例の判決を、徹底的に読み込みます。〈Westlaw Japan〉はPDFでもWordでも、フォーマットにこだわらずにダウンロードできる点が便利です。また、スタッフごとにIDが異なり複数人で同時ログインできるので使いやすいです。
活用するコンテンツとしては、判例そのものと 『判例タイムズ』をよく閲覧します。また、検索結果に対してアラート設定をしておけば、新しい判例がデータベースに搭載された際にメールで教えてくれるのはありがたいですね。

― 具体的に、どのような案件で 〈Westlaw Japan〉は役立っていますか。

石川  事業のグローバル化に伴い、私たちもいままで経験したことのない係争案件に直面するようになっています。たとえば共同開発案件。相手先が撤退を決めると、IHIがそれまでつぎ込んできた研究開発資金は無駄になってしまう。これを相手先に請求できるか否か。少ない判例のなかから、そこに形成されてきた「法理」を読み解くことが重要でした。
また、入札に絡む独禁法違反では、最近は制裁金だけではなく、発注機関から民事上の損害賠償請求を求められるケースが増えています。裁判所による損害賠償認定額は、損害賠償請求が出始めたころは小さかったけれども、時流に乗って増加し、現在、頭打ち傾向が出ています。発注金額(契約金額)の何%というおおまかな相場観が、地裁・高裁のレベルでは出ていますが、こうしたトレンドを捉えるうえでも役立ちました。

― 判例DBの良し悪しが経営判断に影響しますか。

石川  じつは過去、労災事故の裁判で、「勝てる」と思っていた事案で負けたことがあります。事後いろいろ調べてみると、じつは類似裁判があり、そこで「仮に労働者の側に負い目があったとしても、使用者の側には、労働者の安全対策について一歩踏み込んで努力する必要がある」との判断が示されていた。すなわち企業側は「自助努力を理由に労働者を突き放すことはできない」ということです。過去判例からしっかり「法理」を見つけられていれば、和解の道を取ることも考えられたと思っています。意思決定の方向性を作るのは、外部の弁護士ではなく、あくまで我々会社自身でなければなりませんから、その意思決定の方向性のベースを作るうえで、質の高い判例DBは欠かせない存在です。

― 法令データの活用の方はいかがでしょう。

石川  しっかりした法令順守の仕組みを構築するうえで重要です。意図的に不正な利益を得ようとしてのコンプライアンス違反はそうそうありません。ありがちなのは、思わぬ見落としです。

うっかりミスを防ぐ法令DB

石川  たとえば工場内では、一定の資格を持っていないと、やってはならない作業があります。労働安全衛生規則等によって、作業ごとに必要な資格が定められているわけですが、ほとんど厚労省、経産省の省令で変更されるため、法律改正とは違って変更が目立ちません。しかし、うっかり変更を見逃すとコンプライアンス違反につながります。 軽微な法令改正も逃さず、徹底的にカバーするためには、更新スピードが速く、タイムリーに検索できる〈Westlaw Japan〉のような法令DBの活用が不可欠ですね。

― 最後に、コーポレート法務Gの将来構想をお聞かせください。

石川  総務部内の法務Gと、契約法務部の両者が2010年4月1日に合体し、現在の「法務部」になりました。コーポレート法務Gは、旧・総務部法務Gを継承しています。私はそこに在籍していたので、16年間、一貫して経営スタッフとして法務の仕事に関わってきました。統合後の「法務部」全体としては、経営系、営業系それぞれの分野で培ってきた法務の知見・ノウハウを互いに共有することが課題です。
コーポレート法務Gとしては、海外訴訟への対応力向上が課題だと思っています。これまで海外訴訟はほとんど営業関連でしたので、事業法務Gの担当でしたが、最近は、たとえば外国公務員に対する贈賄禁止や、米国での訴訟におけるディスカバリー制度への対応など、個別の営業案件を超えて、経営全体に関わる海外案件が増えています。日本法、外国法の区別なく、経営面から法的リスクに対応していくことが求められています。

(※敬称省略)

 

株式会社IHI 法務部コーポレート法務グループ 石川氏、横田氏
株式会社IHI
法務部コーポレート法務グループ

部長
石川 克己氏 (いしかわ・かつき)

横田 博久氏 (よこた・ひろひさ)

 

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