Westlaw Japan 導入事例Westlaw Japan 導入事例/小川綜合法律事務所, 小川義龍 弁護士

Web法情報検索にも、紙の六法全書にもそれぞれ長所がある。大事なのは、それらを上手に使い分けることです。

ITは鉛筆や紙と同じ 使ってこそ意味がある

― 小川先生は、“弁護士界のIT革命児”の異名を取られるほどITに精通しておられますが、
    いつ頃から取り組んでこられたのでしょうか?

小川  元々がパソコンオタクなのです(笑)。ITなんて言葉がまだ浸透していない時代から、パソコンは仕事のツールとして使っていましたから、そんな姿を見て、所属弁護士会のIT関連部会などにも駆り出されるようになりました。

― 東京弁護士会でもコンピュータ部会長を務められるなど、積極的にIT推進に取り組まれていますね。

小川  はい。東京弁護士会や法律相談センターのホームページの立ち上げや構築にも携わってきました。
また、独立してちょうど丸10年になりますが、事務所開設当初からIT整備には力を入れていました。当時、個人事務所ではまだ珍しかったのですが、専用サーバーを置いて1人2台のパソコン端末を導入しました。弁護士業務に限らず、ITは活用すべきものと考えていましたから。

― 法律業界はIT化が遅れているという意見もありますが、インターネットやデジタル情報化をどう捉えておられますか?

小川  IT至上主義には懐疑的です。どの業界にも言えますが、インターネット技術やデジタル情報は仕事を行う上での便利な道具であって、それ以上のものではない。つまり、鉛筆やメモ用紙と同じことです。よく、何でも電子化してペーパーレス化すればいいという議論がありますが、私はそうは思いません。
例えば、いくらIT化が進んだところで紙の六法全書は放逐できないでしょう。各法分野を横断的に関連情報まで網羅して検索するには、〈Westlaw Japan〉のような法情報検索サービスのほうが有利ですが、よく知っている特定の法令を調べる時は、どこにあるか覚えている分、六法全書のほうが早いし、前後の条文も一覧できます。つまり、情報検索ツールも紙もそれぞれに長所があるので、状況に応じて使い分けることが大事だということです。

変遷を重ねた結果〈Westlaw Japan〉に落ち着く

― 判例検索サービスもかなり普及してきましたが、こうしたサービスの活用の経緯を教えていただけますか?

小川  判例検索という意味では、88年に日本で初めて発売された新日本法規出版のCD-ROM判例検索システム『判例MASTER』を導入したのが最初です。
その後、当時初めて登場したインターネット版の某検索サービスを2年ぐらい使いました。当時はちょうど、PHSのデータ通信が普及しだした頃で、外出先からでもパソコンからインターネットにアクセスできたので、これは便利だと。またCD-ROM型の判例検索システムだと頻繁には更新されない点がちょっと不便だったというのもあります。
その後、判例誌の掲載内容が全部入っていることが決め手となって、さらに別の判例検索サービスを導入しましたが、現在は、最終的に使い勝手やコストパフォーマンスを検討した結果、〈Westlaw Japan〉のみに落ち着いています。

― 〈Westlaw Japan〉の導入の決め手となったのはどのような点でしょうか?

小川  導入の際には、当然、導入コストと効果の両面を考えます。使い慣れているサービスからわざわざ切り替えるだけのメリットがあるかどうかは、特に重要です。〈Westlaw Japan〉については、コストに見合う以上の価値がある。つまり、コストの割には、網羅性が高く関連情報も漏れなく探せましたし、リンク機能や画面遷移の仕方といった使い勝手の良さが決め手になりました。

全文の目次化により検索精度も格段にUP

― 〈Westlaw Japan〉の第一印象はいかがでしたか?

小川

  良かったですよ。弁護士会でも紹介させてもらったぐらいです。当時、私自身はDVD型の判例検索サービスをリース契約したばかりで〈Westlaw Japan〉への切り替えには消極的だったのですが、少し経って機能が格段に向上し、コストパフォーマンスが良くなって導入を決めました。

― 現在、〈Westlaw Japan〉をどのようにお使いいただいているのでしょうか?

小川

  もっぱら判例検索で使っています。使う場面はだいたい次の3つですね。1つ目は、クライアントからの相談に対して、例えばこんな判例があると回答する時。2つ目は、訴訟の書面を書く際に、こちらの主張に好都合の判例を探す時。3つ目は、提訴前に、この法律構成で過去にどんな判例があったかを調べる時です。

― 好都合の判例を探す、というのは、例えばどんなケースでしょうか?

小川  当事務所では、一般民事以外にも著作権や不正競争防止法関連の取扱があるのですが、これらは過去の判例上の判断が非常に重視され、全文検索しないとなかなかわからない場合が多々あります。また、一般的な不法行為で典型的ではないケースの場合に、法的な論点はさほど難しくはなくても事実認定はどうなっているかを調べたい場合があります。このように判例上の判断が重要な要素となる事案の場合は、必ずこちらの主張に適う判例を探します。その場合、全文検索でしか探せないですね。

実務書などの 書籍コンテンツも充実

― 全文検索の活用について、もう少し詳しく聞かせていただけますか?

小川  弁護士経験が浅かった頃は、要旨で判例を検索し、評釈を参考にして使える判例を探すというスタイルでしたが、経験を積むにつれ、評釈を読まなくても判例のポイントはどこにあるのかがわかってくるようになります。むしろ知りたいのは評釈ではなく、判例そのものがどう事実認定をし、法令に適用されているかといったことなので、全文をいかに効率的に読むかということが重要になってくる。従って、個人的には要旨は数行あればよく、全文検索できるサービスのほうがマッチしますね。これには、〈Westlaw Japan〉の判例全文の目次が参照できる機能などシステムが進歩する一方で、使う側の検索テクニックも向上しているという事情もあると思います。

― 検索には、キーワード検索と体系検索の2通りありますが、どちらを使われていますか?

小川  キーワード検索が多いですね。キーワード検索では、条件をかなり絞っても結構な数の判例が結果として表示されることがあるので、その場合は“NOT”(特定の条件に該当する結果を除く抽出の方法)の使い方が鍵になります。ただ、実際には、少しぐらい検索結果が多くても、ざっと目を通した方が結果的に効率的で漏れもないということもあり、あまり絞り過ぎない方が良いと思います。
また、関連する他の判例などを見ていると、実はそれが意外なヒントになったりもしますので、すぐにブックマークするどして、情報の有効活用に役立てています。

― そのほか、〈Westlaw Japan〉の機能で便利だとお感じになるものはありますか?

小川  感心したのは、書籍情報が入っていることですね。実務家の書いた最新のマニュアル本などが手っ取り早く見られて便利です。閲覧ページごとに従量課金される点もリーズナブルだと思います。また、裁判官の情報も、よく見ていくとその傾向が見えてくる場合も多く、対策を講じるのに便利ですね。

― ありがとうございます。
    では、最後に法情報サービスの活用意義や今後の方向性についてお願いします。

小川  〈Westlaw Japan〉に限らず、こういう便利なツールは積極的に活用すべきだと思います。そういう姿勢でないと、個人的には、司法改革による大競争時代に生き残るのは難しいのではないかと思います。

― どうもありがとうございました。

(※敬称省略)

 

小川義龍 弁護士(小川綜合法律事務所 )
小川 義龍 氏
<略歴>
1964年 東京都出身
1987年 早稲田大学法学部卒業
1991年 司法試験合格
1994年 東京弁護士会弁護士登録
司法研修所 46期
東京弁護士会広報室嘱託
同インターネット協議会副議長
同業務改革委員会コンピュータ部会長
サイボウズ株式会社監査役(現任)など歴任

 

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