総合法政策研究会誌
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目次
【研究論文】
- 個人情報保護法2021年改正による自治体審査会等への影響
下村誠(京都府立大学 准教授)(1)
公開日:2022/10/26
- 〔要旨〕
個人情報保護法の2021年改正により、国と自治体との間で、個人情報保護法制が一元化されることとなった。これまで、自治体は創意工夫して個人情報の保護に努め、一定の成果をあげてきた。しかし、自治体ごとの取組みであったため、いわゆる「2000個問題」や「共通ルール」の必要性などが指摘されるようになり、改正に至る。その影響は多岐に及ぶが、本稿では審査会等に着目し、改正により、審査会等はどのような影響を受けるか、それにより、自治体はどのような対応を迫られるか、京都府内の現状を踏まえて若干の検討を行った。そして、審査会等の実態として、いくつかのパターンを確認し、改組・改編等の方向性を示した。
最後に、条例の改正作業の前に、自治体は、これまで行ってきた個人情報保護の取組みについて検証する必要があろうことを指摘し、2021年改正に伴う対応では、当該自治体の個人情報保護に対する姿勢が問われていることを付言した。
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【研究論文】
- 条例による政省令の「上書き」に関する研究
―地方議会の議決は政省令に従うべきなのか―
石原治(名古屋市立大学大学院)(21)
公開日:2023/3/15
- 〔要旨〕
第2次地方分権改革において、当初は「条例による法令の上書き権を含めた条例制定権の拡大」が掲げられたが、実際に行われた法改正は、これまで国が定めていた、保育所などの施設の基準について、地方公共団体が条例で施設の基準を設定することに改めることとしたものの、他方で、「従うべき基準」「参酌すべき基準」を国が定め、条例で基準を設定するさいに、国の「従うべき基準」に従い、あるいは「参酌すべき基準」を参酌しなければならないというものであった。
学界においては、条例で定められる範囲が狭いことや、従うべき基準が導入されたことについて批判がなされた。
本稿では、「従うべき基準」や「参酌すべき基準」が、法律本体ではなく省令で定められたことが最大の問題であったと指摘をする。その結果、条例が法律をも上書きするという議論であったはずのものが、条例が省令に従わなければならないということとなった。
そして、本稿では、実定法解釈論、立法政策論の両面から、条例が政省令に優越し、条例が政省令を上書きできることを示し、それを明確にするための法改正の提案も行う。
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【編集後記】
- 編集後記 小林直三(名古屋市立大学大学院 教授)(101)
公開日:2023/3/31
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※著者の所属は発行時のものです。