総合法政策研究会誌
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目次
【招待論文】
- タイにおける法学教育の発展と平準化 西澤希久男(関西大学 教授)(1)
公開日:2020/3/10
補正日:2020/03/31
- 〔要旨〕
本稿は、タイの法学教育の発展と近年の動きである平準化について検討することを目的としている。
タイは、開国後における法制度構築、運営において西洋法の影響を受けてきたため、西洋法の知識を有する人材を育成することが必須となり、そのため体系的な法学教育が開始された。法学教育は高等教育機関において実施されているため、法学教育の拡大は、高等教育機関設置の拡大に依存していた。
近年の法学教育の拡大とグローバリゼーションの影響により、法学教育の質の保証が求められることとなったが、教授内容の質を求めるあまり、教員の資格要件の設定、平準化された、裁量の少ないカリキュラムを導入したため、担い手の確保の困難が予想され、地方の法学教育の縮小が懸念される。
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【研究論文 】
- 国際的組織再編税制における人的対象範囲
-EU合併租税指令とその修正案を参考にして- 中村繁隆(関西大学 教授)(18)
公開日:2019/12/27
- 〔要旨〕
本論説は、わが国の組織再編税制の国際的側面をさらに拡張した場合における人的対象範囲に関して、EU域内における国際的組織再編税制に関する合併租税指令(Merger Tax Directive. 以下、MTD)及びその修正案を参考に検討を行ったものである。
わが国の組織再編税制における適格組織再編成の対象は、「法人」である。しかし、その定義が法人税法及び所得税法に置かれていないため、その概念について学説が分かれている。デラウェア州法上のLimited Partnershipの法人該当性に関する2015年7月17日の最高裁判決は1つの判断基準を示したが、その射程が国際的組織再編税制に及ぶか否か明らかではない。
MTDの対象はCompany from a Member Stateであるが、Companyの定義規定はMTDにはない。先行研究者による修正案も対象に加えて分析した結果、租税法上の「法人」概念が必要であるとの示唆を得、人的対象範囲に関する次の2つの提言に至った。第1は、法人税法2条及び所得税法2条にある内国法人及び外国法人の定義規定を修正すること、第2は、「国際的組織再編成」という用語の定義を法人税法2条及び所得税法2条へ新設することである。
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【特集】
- 2019年度パブリック・アチーブメントシンポジウム
法とシティズンシップ―地域づくり・都市づくりのリテラシー― 総合法政策研究会(51)
公開日:2020/2/7
- 〔要旨〕
パブリック・アチーブメント(Public Achievement, PA)とは、H・C・ボイト(Harry C. Boyte)教授が提唱した、公共的な活動やコミュニティ参加プロジェクトに重点を置くシティズンシップ教育である。本シンポジウムでは、PAの視点を踏まえ、地域づくり・都市づくりの担い手である市民に必要とされる法的・政治的リテラシーについて、5名のパネリスト(中村隆志(政治学)、小林直三(憲法)、中村繁隆(租税法)、大江一平(憲法)、根岸忠(労働法・社会保障法))が報告を行った。また、これらの報告に対して、2名のコメンテーター(成川忠之(経営学)・堀本麻由子(教育学))が大学におけるシティズンシップ教育の観点からコメントを行った。
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【編集後記】
- 編集後記 小林直三(名古屋市立大学大学院 教授)(69)
公開日:2020/3/31
※著者の所属は発行時のものです。