判例コラム
(旧)コラム

 

第172回 法情報を使えるかたちで -法律図書館にできること-

成城大学法学資料室
隈本 守

「多くの法律図書館は、資料の電子化にともない、図書資料を所蔵する場所としてはその役目を終える」、これは10月の法律図書館連絡会総会、特別講演※1の一部であるが、聞いていた法律図書館員にはショッキングなものだったのではなかろうか。趣旨としては法律図書館不要論ではなく、これからの法律図書館に求められるもの、についてであり、具体的には、資料を所蔵し利用に供する図書館から、情報収集の拠点として変化が求められるというものであった。これは、本コラム156回『「ボーン・デジタル」あるいはロー・ライブラリーの終焉!?』※2の指宿教授の話にも通じるものであり、法律図書館員に限らず、法情報に係わる方には広く認識、検討されるべき課題といえる。

PDF等の電子化が進むと、どこにでもあるような図書資料は、各図書館で多大な資源と労力をもって冊子体で保存することの意味が減少する、とされる一方、法情報サポートの面では効果的な情報収集が求められ、その重要性はより増してきている。これは法学研究、法律実務において扱う情報が国際化し、専門化していることや、情報収集から整理、発表までの時間制限が短くなっている状況、さらに一般利用者が法情報を利用する機会が多くなっていることなどがその背景にある。もちろんこれは電子化された情報に限ることではなく、図書資料についても同様であるが、この状況で法律図書館に求められるサポートは、所蔵する図書資料をタイトル、著者名から検索し、その配架場所・所在を教えるたぐいのものではない。国内判例、法令、論文はもちろん、その他、利用者が求める外国法を含む多岐にわたる法情報と、その周辺情報として医学、特許技術など高度に専門化した各種情報を、図書単位ではなく判例・法令・論文等の情報単位で、まとめて、迅速に、使えるかたちで、収集利用する環境を作り、これをサポートすることとなっているのである。

しかし法律図書館といっても、現状ではこのような法情報の収集・利用サポートができる体制、環境を備えるところは多くはないのではなかろうか。先の講演者からの提案は、法律図書館を含む図書館の人的ネットワークを、国境、ジャンルを越えて広く有効に活用することにより、各図書館に法情報のサポートが出来る図書館員がいなくとも、図書館同士の連携によりどこでも法情報収集が出来るように、というものであった。図書館ネットワークを活用した法情報サポート環境は望ましいものではあるが、このためには法情報サポートについての問い合わせに回答できる法律図書館、ないしは相当の問い合わせ先がネットワーク内に十分整備されることが不可欠となるように思う。

このように考えると、これからの法律図書館に求められる機能は、(1)図書・資料、情報等を社会的アーカイブとして保存する機能、(2)現在の1週間以上かかる文献複写ではなく、出来れば1時間以内など短時間でのPDF等による資料取り寄せを可能とする、資料収集のための連携・ネットワーク機能、(3)調べ方の補助・助言等を行う他の専門図書館に助力を求められる、サポートのための連携・ネットワーク機能、(4)学生、一般利用者に法情報検索から利用までのサポートを行う、法情報収集サポート機能、(5)院生、専門家の利用に応えるかたちで法情報を収集、あるいは情報収集利用から発表までをサポートする、専門的サポート機能、(6)法情報の保存、提供環境を時代に合わせて改善整備し、必要に応じて他の図書館からの資料の調べ方、環境の整備の問い合わせにも応えることができる、他の図書館まで援助可能な専門図書館機能、などとなるのではないだろうか。これらの機能について各法律図書館が、どの機能に重点を置くのか、どの部分はどの様な方法で外部に依存するかたちで補うのかを十分検討した上で、そこに必要な人材を養成・配置し、方法を整備することにより結果として法情報のサポートをしていくことが、利用者から求められていると言える。

法律図書館としては、これからの法情報収集支援サービスの内容と方法について利用者・社会のニーズを受けとめて、機能のバランスを考えつつこれに応えていきたいところである。「法情報はあるが使える人しか使えない」という時代にしないために法律図書館が果たすべき、そして期待される役割は大きいのではなかろうか。

(掲載日 2011年12月19日)

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