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第36回 キューバの外国投資法制

大東文化大学、國學院大學、北陸大学 非常勤講師
税理士 佐々木 雄一

1959年に樹立されたフィデル・カストロのキューバ革命政権は、1960年8月6日にアメリカ合衆国および諸外国のキューバ国内にある財産を国有化した。これによりキューバにおける初めての外国投資規制が開始された。その結果、1959年より1989年まで、外国からのファイナンスのうち約65%は、ソ連およびCOMECON(経済相互援助会議)諸国の協力に依拠した。

1980年代初めに対外債務支払問題が深刻化したことから、資本主義国からの外国直接投資や技術を求めて、1982年に外国投資に関する「政令法No.50(Decreto Ley No.50)」が制定された。1990年代には、ソ連やその他の社会主義国の没落によりキューバ経済は大打撃を受け、一層外国直接投資が求められることになった。1992年のキューバ憲法改正により、合法的に設立されたジョイント・ベンチャーおよび経済パートナーシップの資産が国家により承認され、その使用、享受、処分は法および条約、同様にそれ自体の定款および規則の条項によって規律されることが規定された。

さらに、1995年に現行法である「法律No.77外国投資法(Ley No.77 Ley de la Inversion Extranjera)」が制定され、1982年政令法No.50では不備であった点が改正された。主な点は、①承認規則について、従来は手続が明示されていなかったが、提出書類、プロジェクト承認可否の判定期間とともに明確にされたこと、②投資形態は、従来はキューバ資本と外国資本のジョイント・ベンチャーおよび49%まで外国資本が参加できる他の形態(法人設立を含まない)だけが認められていたものが、ジョイント・ベンチャー、国際経済パートナーシップ契約、外国資本100%の企業の3種類となったこと、③部門ごとの開放状況が明確でなかったものが、武器、教育、厚生の3部門だけを例外として、他は開放されたこと、④外国投資は49%までの制限があったものが無制限となったこと、⑤保険に関して、従来はキューバの保険会社に優先権が与えられていたが、承認されている保険会社のいずれとも契約可能となったこと、⑥従来の配当、純利益、清算時の持ち分を送金する権利に、非収用等の投資資本の完全な保護が加えられたこと、⑦雇用契約に関しては国営雇用企業を通じる契約に加えて直接雇用が可能とされたこと、⑧免税地域の新規創設、⑨優遇産業地域の新規創設等の改正が行われた。この改正後、EU諸国が主たる投資国となり、観光、石油・ガス、鉱山、エネルギー、通信などの分野に外国直接投資がもたらされた。

しかし、近年になって、ベネズエラや中国との関係が深まる一方で、他国の案件は伸び悩み、キューバへの外国直接投資は変化の兆しを見せている。

(掲載日 2008年11月17日)

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