判例コラム
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第185号 コンビニエンス・ストア加盟店オーナー(フランチャイジー)が労働基準法及び労働契約法上の労働者に該当しないとされた例 

~東京地裁平成30年11月21日判決・平29(ワ)33587号損害賠償請求事件※1

文献番号 2019WLJCC030
弁護士法人心斎橋パートナーズ 弁護士
神田 孝

1.事案の概要と争点

 本件の原告は大手コンビニエンス・ストア「セブン-イレブン」の加盟店(フランチャイジー)であり、被告はその本部(フランチャイザー)である(株式会社セブン-イレブン・ジャパン)。原告と被告との間にはフランチャイズ契約が締結されていたが、原告は、自身が労働基準法及び労働契約法上の「労働者」に当たると主張して、被告であるセブン-イレブン本部に対して、不法行為に基づく未払賃金相当額及び慰謝料等の損害賠償を請求した(予備的に労働契約に基づく未払賃金の支払を請求)。このように、本件では、フランチャイズ加盟店が労働基準法上・労働契約法上の労働者に当たるかが主たる争点となった。

2.契約終了後の競業避止義務の有効性

  1. (1)  労働基準法上の労働者概念と労働組合法上の労働者概念の違い
     労働法分野における労働者概念については、大きく労働基準法、労働契約法、労働者災害補償法上の概念と、労働組合法上の概念に分かれる。労働基準法上の概念と労働組合法上の概念を比較すれば、労働基準法上の労働者の定義には労働組合法上の定義に「事業又は事務所に使用される」(使用従属性)と言う概念が加わる。
  2.  【労働基準法9条】
    この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
    【労働組合法3条】
    この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。
  3.    労働基準法は労働条件の最低条件の保障、特に賃金支払を刑事罰をもって強制する強行法規である。労働者の賃金は「労務提供の対価」であり、使用者から労務提供について指揮命令を受けてこそ、労務の対価として賃金が支払われたと言えるので、労働基準法上の労働者と言えるためには、「使用従属関係(指揮命令監督関係)」が不可欠の要素となる。
     これに対して、労働組合法は労使対等な交渉の実現を目的にすることから、労働組合法上の労働者と言えるかは、「組織同士での交渉」がふさわしい関係にあるかが問われる。そのため、その者が会社の事業遂行に不可欠な労働力として「事業組織に組み入れられているか」が重要な判断要素となる。
     このように労働基準法と労働組合法とでは、その立法趣旨の違いによって、労働者概念も異なるのであり、このことは本判決においても確認されている。次に、コンビニ・フランチャイズの加盟店が労働基準法上の労働者に当たるかについて、本判決内容を検討する。
  4. (2) 業務遂行上の指揮監督の有無について
     使用従属関係があると言えるためには、業務遂行において使用者が指揮監督を及ぼしていることが必要となる。フランチャイズ契約では、本部が加盟店に対して仕入先を指定したり店舗運営について指導するので、指揮監督の要件が満たされているように見える。
     この点、フランチャイズ契約とは、本部が加盟店に対してセブン-イレブン店舗を経営することを許諾するとともに、本部として継続的に経営指導、技術援助、各種サービス(市場調査、商品仕入援助、広告・宣伝、会計処理等)を提供することを約し、他方、加盟店がセブン-イレブン店舗の経営を行い、これについてフランチャイズ本部に一定の対価(セブン-イレブン・チャージ)を支払うことなどを内容 とするものであり、加盟店による労務の提供自体が契約の目的とされているわけではない。
     そのため、本判決は、本部が加盟店に対して仕入先を指定したり店舗運営について助言指導することは、フランチャイズ契約上の本部としての「義務」の履行であって、使用者がその「権限」として行う労働者に対する指揮監督とは異なると述べる。また、チェーンとしての統一的な同一のイメージを確保するために必要な指導を行うことは、使用者が労働者に対して行う業務遂行上の指揮監督と同列ではないと述べる。
  5. (3) 時間的・場所的拘束性の有無、労務の代替性について
     加盟店は契約上指定された店舗で業務し、そこで24時間営業を義務付けられていたことから、原告は被告から時間的場所的拘束を受けていたとして自身が労働者に該当すると主張した。
     しかし、裁判所は、それは原告・被告間のフランチャイズ契約の内容によるものに過ぎないとした。また、加盟店が本件各店舗の店舗業務を自ら行うか、行うとしてどの程度の時間行うかは、経営者である加盟店自身の判断に委ねられていたものであり強制されたものではないとし、原告の業務が親族やアルバイト従業員で代替できるものであったとしても、逆に、それらの者に業務を代替させていたことは原告の労働者性を否定する方向に働くと述べた。
  6. (4) 報酬の算定・支払方法等について
     コンビニエンス・ストアのフランチャイズ契約では、加盟店は、店舗の全売上金を本部に送金した上で、商品代金やチャージ金額を控除した残金を本部から返金される。また、最低保証制度が定められている契約が多い。原告はこれらの事実が加盟店の労働者性を基礎付けると主張した。
     しかし、裁判所は、これらは原告と被告との間でフランチャイズ契約の内容をどのように定めるかと言う問題にとどまり、加盟店の事業者性を否定するものではないと述べる。また、店舗のアルバイトの給与について本部が支払代行していたが、裁判所は、アルバイトの給与金額は加盟店が決定し加盟店の負担で支払われていたとして、労働者性を否定する事情とした。
  7. (5) 小括
     このように、本判決はフランチャイズ・システムにおける業務の実態を詳細に分析して加盟店は労働基準法上の労働者に該当しないと結論付けた。裁判所がフランチャイズ契約書の文言を重視していることは、注目すべき点である。

3.加盟店の労働組合法上の労働者性について

  1. (1)  本件ではコンビニ・フランチャイズの加盟店が労働基準法上の労働者に当たるかが問題とされたが、コンビニ・フランチャイズの加盟店については労働組合法上の労働者に当たるかも問題となっている。
     この点、地方労働委員会段階では、コンビニ加盟店は労働組合法上の労働者に当たると判断されたが(岡山県労働委員会命令平成26年3月13日、東京都労働委員会命令平成27年4月16日)、中央労働委員会は、コンビニ加盟店は労働組合法上の労働者には当たらないと判断した(中央労働委員会命令平成31年2月6日※2)。中労委は、加盟者でも複数加盟・法人加盟など様々なバリエーションがあること、同じ条件の店舗を運営しても加盟店の経営努力等によって業績に差が出ることなどに照らして事業者性が認められると判断したものである。
  2. (2)  他方、同じフランチャイズ加盟店でも、個人が加盟する学習塾については労働組合法上の労働者性が肯定されている(東京都労働委員会命令令和元年7月31日。公文式救済命令申立て事件)。この命令においては、公文式チェーンの契約書では、教室指導者本人の労務提供が前提となっていたこと、個人加盟のみで法人加盟がなかったことが根拠とされている。フランチャイズ契約ではないが、業務委託契約の受託者についても、個人契約が多数を占める場合は労働組合法上の労働者性が肯定されているので(最三小判平成23年4月12日労判1026.27 INAXメンテナンス事件・WestlawJapan文献番号2011WLJPCA04129002、最三小判平成24年2月21日労判1043.5ビクターサービスエンジニアリング事件・WestlawJapan文献番号2012WLJPCA02219001、東京地判平成24年11月15日判タ1404.126ソクハイ事件・WestlawJapan文献番号2012WLJPCA11156001)、その延長線上の判決と言えよう。
  3. (3)  先述したように、労働組合法上の労働者概念は、組織同士での交渉がふさわしい地位にあるか(=その者が会社の事業遂行に不可欠な労働力として事業組織に組み入れられているか)の観点から合目的的に判断される。そのため、労働組合法上の労働者に当たるかは、比較的広く認められている。
     同じフランチャイズ契約であっても、個人加盟が前提となっているチェーン(個人で加盟し経営する小規模学習塾FCや英会話教室FC、加盟店が器具を購入して自ら作業を行うビル清掃FCなど)の場合は、複数出店や法人加盟が多いチェーンと比較して、労働組合法上の労働者性が認められる可能性が高いと言えよう。一言でフランチャイズ・システムと言っても、その経営形態や加盟店オーナーの業務状況はチェーンごとに大きく異なる。

4.今後の課題

  1. (1)  働き方改革による労働時間の抑制、IT業界従事者の増加、スマホ等の情報通信技術を活用した就業方法の開発(テレワーク、Uber Eatsなど)により、従来の労働契約とは異なる形態による働き方が増えつつある。そうした働き方に従事する労働者の地位を向上させるべく、厚生労働省は2019年6月28日に「雇用類似の働き方に関する論点整理等に関する検討会」の中間整理を公表した。また、公正取引委員会も「人材と競争政策に関する検討会」から提言を行っている。本判決は、こうした流れの中で重要な意味を持つと言えよう。
  2. (2)  他方、コンビニ業界に目を転じると、24時間営業(時短問題)、見切り販売、ドミナント戦略など様々な問題が議論されている。24時間営業の問題は加盟店オーナーの長時間労働と表裏の関係にあるが、その意味で、本判決は加盟店オーナーの労働災害や安全衛生とも密接に関わるものと言える。

(掲載日 2019年11月22日)

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